エチオピアの情報量の少なさ

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昨年のナゴルノ・カラバフ戦争では、アホなアゼルバイジャン兵やアルメニア兵が自分たちの戦争犯罪まがいな行為(もしくは完全に戦争犯罪行為)をスマホで撮ってSNSにアップして、自分たちの意図しない形ではあるが拡散したり…

最近のミャンマーの軍による弾圧も、市民がデモの様子や発砲する軍の様子をスマホで撮ってSNSにアップして、こちらは意図的に軍の蛮行を国際社会に拡散させようとしているが…

それに比べてエチオピアのティグレ州にかんしては、写真や動画がまぁ出てこない。

厳密にはないことはないのだが、焼け焦げた軍用車両だったり、地面に転がる死体だったりと完全に事後の写真で、捕虜になったアルメニア兵を射殺しているところの動画とか、デモ隊のミャンマー市民に向かって小銃を水平射撃する軍と警察の動画とか、そういう現行犯の決定的な証拠が相対的に少ない。

一応、現行犯の証拠になるようなものもあるにはある。

崖の上に連れて来られた私服で非武装の男たちを取り囲む武装した軍服姿の兵士たち。兵士たちが男たちを崖の淵に連れて行って背後から銃を撃った虐殺の動画が5本ネット上に出た。

その内の1本で、とくにグロテスクな場面がない動画(銃声あり、死体なし、銃撃後にどうなったのかは分からない内容)がこちら。

BBCやCNNやアムネスティ・インターナショナルなどが衛星画像、3D地形情報などを使って犯行現場はティグレ州の古都アクスムの南15km、マヒベレ・デゴ近くの崖の上と特定。

犯行現場の場所を特定していく過程に関しては『Mahbere Dego: Clues to a Clifftop Massacre in Ethiopia』が詳しい。映像に映っている人の影の長さや、地形、兵士たちの話している言語から分かることを解説。5本の動画のうち、1本は撮影場所が違うという結論に。

CNNとアムネスティの共同検証の結果の記事『‘Two bullets is enough’ Analysis of Tigray massacre video raises questions for Ethiopian Army』でもやはり、犯行現場はマヒベレ・デゴの南3マイルの崖と特定している。

とまぁ、こんな感じで全くないわけではないのだが、ナゴルノ・カラバフやミャンマーなどと比較すると画像や動画の情報量が圧倒的に弱い。

やっぱ…エチオピア政府がティグレ州の電力と通信を遮断したのが効いているのか?ともちょっと思ったりして。

今後、なにか悪いことをしようと思ったら電気とネットを切断して現代社会から隔絶された環境にしておいてからやれば、全てを闇に葬ることが出来るぜ!!

電力と通信の遮断は情報量の少なさの要因のひとつではあるかもしれん。

上述したCNNの記事によれば、5本の動画は虐殺に加担したが良心の呵責を感じて内部告発を決意したエチオピア兵からティグレ・メディア・ハウスが買い取り、そのお金で内部告発者は国外に逃亡したらしいが…インターネット接続の制限が続いているので、撮影者は動画を分割&圧縮してWhatsAppで送信したと言う。

生データじゃなく、分割&圧縮しちゃっているから撮影日時や撮影デバイスの情報や、編集の有無が分かるメタデータが消えてしまったと。だから動画も荒いし。

でもなぁ…当初は完全に電力と通信を遮断していたけど、今は制限があるとはいえ完全に世界から遮断されているわけじゃない。それに別に遮断されていようが、写真や動画を撮ること自体は出来るわけで、撮ったものをデバイスに保存しておいて通信が回復したらネット経由で送ればいい話なんだよな…

他に考えられるとすれば…

もしかして、スマホ(もしくはカメラ付き携帯電話)の普及率の問題か?

写真や動画を気軽に撮って、気軽にSNSにアップして、世界に拡散しちゃった!的なことが出来るには、通信環境もそうだけど、そもそも気軽に写真や動画を撮れるようなデバイスを皆が持っていないと。

そんなわけでDataReportalで調べてみた。以下、全て2021年1月時点の情報。

まずはインターネット普及率だが、ミャンマーは43.3%なのに対してエチオピアは20.6%だけ。

続いてSNS普及率は、ミャンマーは53.1%なのに対してエチオピアは5.8%ぽっち。

携帯電話契約者数は、ミャンマーは127.2%なのに対してエチオピアは38.5%。1人で複数台所有していると100%を超える。

最も普及しているメッセンジャーアプリは、ミャンマーはフェイスブックメッセンジャーなのに対してエチオピアはIMO。IMO?何それ、知らん。エチオピア以外ではトルクメニスタンとタジキスタンで人気のメッセンジャーアプリらしい。

残念ながらDataReportal以外も調べてみたが具体的な最近のスマホの普及率は分からなかったが、はっきりわかったことがひとつ。

エチオピアは世界の発展途上国の中においてさえ飛びぬけて携帯の普及率が低い。「アフリカだから…」という話ではなく、アフリカの中でも飛びぬけて低いのだ。

2018年時点で、2Gは人口の99%をカバーしているが、4Gは首都アジスアベバだけという貧弱な通信環境なのは…未だにエチオピアでは国内通信市場を国営エチオ・テレコムが独占してるから。

2Gって!!

未だに独占状態なのは世界的にも珍しいみたいだが、2019年に自由化を表明。

ちなみに現時点では新規参入のためのライセンスの入札中だから、まだ独占状態は継続中。

そもそも通信サービスを長年にわたって国営の独占にしていたのは、その間ずっと政権の中枢にいたTPLF(ティグレ人民解放戦線)の責任。

政府はネットを完全に制御(検閲を含む)しており、すべての電話ユーザーとインターネットトラフィックのログを取っていて、政府によるネットの検閲をすり抜ける(VPNとか?)ような行為は懲役15年の罪。

世界でも珍しく通信市場独占 ⇒ 速度が遅い・料金が高い・サービスが悪い ⇒ 携帯の普及率が世界的にも低い ⇒ 結果、エチオピア軍(もしくはエリトリア軍)がティグレ州で悪いことをしても写真も動画も出回らない。だって皆スマホ持ってないんだもん。

通信市場の自由化を表明したのはアビィ首相だから、TPLFは自分の蒔いた種がこんな形で自分に跳ね返ってくるとはな。もっと昔に自由化してして、スマホがもっと普及していたら…ティグレ州におけるアビィ首相(エチオピア軍)の蛮行を白日の下に晒せたかもしれないのにね。

ミャンマーの未発達の電気通信セクターの自由化は、エチオピアで同様の変化がどれほど成功するかを予測するのに役立つ可能性がある。2013年にミャンマー政府が通信セクターを自由化したとき、モバイルSIMの普及率は10%から99%に急増し、モバイルブロードバンドの普及率はわずか4年で3%から67%に増加した。ミャンマーでは、自由化により、価格の引き下げ、モバイルSIMの普及率の向上、および国際帯域幅の拡大が実現した。

自由化以前は、国内で唯一の事業者が300米ドルものSIMカードを提供していたが、新しい事業者2社の参入により、SIMカードの価格はわずか1.50米ドルに下がった。(analysys mason)

もしエチオピアでスマホが普及していたら、ティグレ州の内戦が国際世論にどう影響を与えていたか?は気になる。

ただ…ミャンマーを見ていて思うのは、仮に画像や動画で“証拠”がたくさんあったとしても国際社会は大した助けにはなってくれない、というのもあるけど。

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