南アから日本に帰る【13】飛行機

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第12話に続く第13話。

南アフリカのケープタウンから、日本まで飛行機を使わずに帰る。

基本的にはそのつもりでいたが、実は2回も飛行機に乗っている。

イエメニア

固有種だらけの独自の生態系をもつインド洋のガラパゴスと呼ばれる世界自然遺産の島。

Carport, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

赤枠で囲んだところがソコトラ島だが、イエメン本土よりソマリアの方が近い。

本土からダウ船(木造帆船)で3日くらいで行けないこともないらしいが、ソマリア海賊が出るので外国人のソコトラ島への船での渡航は禁止されていた。

そうなると残された手段は飛行機しかない。

イエメンの国営航空会社イエメニアの国内線でソコトラ島へ行った。

イエメンの国内線は、首都サナア発のフライトだけは指定席だったが、経由地などサナア以外の空港から乗る場合は自由席だ。搭乗券にも座席番号の記載はない。

サナア以外から飛行機に乗る時は座席は早い者勝ちなので、ゲートオープンと同時にダッシュで我先にと飛行機に殺到するのがイエメンスタイル。

飛行機なのに自由席

ソコトラの玄関口にして最大の町は人口8千人ほどのハディボ。

町の背後には荒々しいハジール山地が迫る。

本土の山岳地帯と違い、この山の上にカラシニコフで武装した民族が住んでいることもなく平和で自然豊かな島だ。

島にはジャンビーヤを差している男もいるにはいるが、本土の山岳地帯ほど「ジャンビーヤは男の魂だっ!」みたいな“男たるもの武装してなんぼ”感はなかった。

ジャンビーヤを差していない男の方が多かった印象がある。

島北西部のクレンシャには美しいエメラルドグリーンの遠浅ビーチがある。

海岸線から島の中央、山間部に入っていくと奇妙な植物だらけの景色になる。

よく目につくのが塊根植物だ。

つるつるボディーのボトルツリーがそこらじゅうに生えている。

デザートローズ(砂漠の薔薇)と呼ばれる花を咲かせているボトルツリーもあった。

こちらは固有種ソコトラ竜血樹の森。

かつて薬や染料として重宝された赤い樹液(ドラゴンの血)が採れるから竜血樹(英語でもドラゴン・ブラッド・ツリー)らしい。

ドラゴンの血を見たことあんのか? 青だったらどうするんだ?って話だし、血が赤いのは人間だって同じなのに…

島内には、絶滅危惧種のエジプトハゲワシがやたらウロウロしている。

島内に生息している爬虫類とカタツムリはそのほとんどが固有種らしい。

探していないので一度も見ていないが、そう本に書いてあった。

このソコトラに行くために飛行機に乗ったのが1回目。

安全圏

アラビア半島に上陸してから今後のルートを迷っていた。

イエメンからオマーンやUAEに行けば、イランのバンダル・アッバースに船で渡れる。

イランに渡ってしまえば、イラン→パキスタン→中国→日本でゴールできちゃう!!

パキスタンなんてほぼ日本じゃん!

う~ん、近い…近すぎる…

パキスタンが視野に入ってくると、もはやゴールである日本が圧倒的現実感を伴って迫ってくる。

実は…日本に帰国することに少しビビっていた。

友だちに「日本に本帰国することにした」と告げた時も、「日本に住むのはもうムリだよ。団体行動できないじゃん」とか「日本に住んでる姿が全然想像できない」とか「他人に合わせるのが嫌いな人が日本でやっていけるの?」とか散々否定的なことを言われて、ちょっと心配になっていた。

いやいや、オレの適応能力の高さを分かってない! 日本ですら普通に住めちゃうから、オレは!と強がってはいたものの…

いざ、イラン→パキスタン→中国→日本とゴールが具体性を持って近づいてくるとためらいが出てきた。

イエメンの山岳地帯より日本の方が怖い。

海外8年目という年月がオレをそんな気持ちにさせていた。

とりあえず…一旦現実逃避しよう!

自分にはまだ日本に帰る心の準備が出来ていない。

オマーン、UAEくらいまではいいが、ホルムズ海峡を渡ってイランに入ってしまうと一気に日本が射程圏内に入ってしまう。一旦、射程圏外の安全圏に逃げよう。

イエメンから砂漠を900km走りオマーンのサラーラへ向かう国際バスに乗った。

オマーンはあまりの暑さで目が潰れる!

と聞いていたが、幸運なことにサラーラはオマーンの避暑地として知られている。

いざ行ってみると気温38度で、オレが知らないタイプの避暑地であった。

こ、これは涼しいのか?

さすがに目が潰れるほどの暑さではなかったので、それが避暑地たる理由なのかもしれん。

サナアの快適な気候が懐かしい…

オマーン国内を移動中、全く変化のない砂だけの景色の中を走っていたバスの車窓に地平線いっぱいに広がる巨大な雲が見えた。

最初は雲かな?と思っていたのだが、違った。

天まで届く高さの巨大な壁が地平線からグングンと近づいてくる。

巨大砂嵐だ!!

あんな景色は生まれて初めて見た。

Horrible Sand Storm In Oman Work Site

砂嵐が壁となって迫ってくる様が一番恐ろしい。

中に入ってしまえば、見た目から想像していたほどの風の強さはなく台風の方がよっぽど風が強い。

エア・アラビア

アラブ首長国連邦(UAE)で行き止まり感が出たのは、サウジアラビアのせいだ。

サウジアラビアが非ムスリムにも門戸を開いたのは2019年9月からで、つい最近のこと。

それまでは商用ビザで仕事として入れても、旅行者としては入国できなかった。

石油で金はあるから、非ムスリムの観光客なんか来なくていいというスタンス。

サウジアラビアを避けて通ろうにも、アラビア半島の80%も占めやがって避けようがない!

致し方ない、飛ぼう。

ソコトラ島に行くために1度飛行機に乗っていたので、その流れでもう1度飛行機に乗ってサウジアラビアを飛び越えることにした。

これがこの旅で2回目、そして最後の飛行機になった。

UAEで購入したのはエア・アラビアの航空券。

シャルージャ国際空港とかいう、聞いたこともない空港から飛んでいる。

UAEから飛行機に乗り、サウジアラビアを飛び越えて3時間半かけてやって来た。

ただいま、アフリカ!!

もうアフリカに来ることなんて二度とないかもな…と思いながらアル・ナスル号の船上から遠ざかるアフリカ大陸を眺めたわずか40日後、アフリカに戻ってきた。

飛行機はエジプトのアレクサンドリアに降り立った。

一旦ゴールの日本から離れて、安心の射程圏外アフリカで落ち着こう。

イラン→パキスタン→中国→日本でゴールできちゃうことにビビったオレは、日本とは逆方向のエジプトに飛んだ。

そもそもの話、本来ならエチオピア→スーダン→エジプトと順当にアフリカ大陸縦断を北上してエジプトに行っていたはずである。スーダンのビザが取れなかったせいで、エジプトを目前にしてアラビア半島に急ハンドルで右折してしまったが、なんか気持ち悪い。

一応けじめとしてエジプトに行って「アフリカ大陸を縦断したった」感は出しておくべきだろう。

あと…すっかり忘れていたが、自分の荷物を取りに行かないといけないので日本に帰る前にドイツに寄って行かないといけない。

早くドイツに行かないと…と思いながら、エジプトに2カ月滞在した。

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