南アから日本に帰る【7】詐欺

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第6話に続く第7話。

ウガンダの首都カンパラからケニアの首都ナイロビに移動してきた。

首都の野生王国

東アフリカ随一の都会、ナイロビ。

そんな都会の中にナイロビ国立公園がある。

国立公園から市内の高層ビルが見えるが、ナイロビ中心部から車でたったの15分!

思っている以上に「こんなに近いとこにあるの?!」とビックリする。

世界で唯一の首都にある“野生の王国”のため、観光客にとっても、動物にとってもアクセス抜群。国立公園周辺の住宅街なら、人間が出向かずともライオンの方から来てくれちゃうくらいアクセスが良い。

Lion caught on CCTV snatching a rottweiler – BBC Africa

雌ライオンが体重75kgの大型犬ロットワイラーを連れ去った時の防犯カメラ映像。

この地区では1週間で犬6匹が消えたそうだ。

“アフリカらしい”事件ではない。住宅地が国立公園を取り囲んでいるナイロビがかなり特殊なだけ。

車で2~3時間もあれば1周できるほどのこじんまりとした広さもまた良く、コンビニ感覚で気軽に野生動物と出会える。

そんな国立公園の敷地内にナイロビ動物孤児院がある。

怪我をした動物のリハビリや、親を失ったり親に放棄された動物孤児を育てている場所だ。

当時、そこに人間に育てられたチーター3姉妹がいた。

そして…担当の係員にこっそりお小遣いを握らせると3姉妹の檻の中に入れてくれた。

腹ペコ状態のチーターはあまりよろしくないらしいので、まずは3姉妹のお腹をいっぱいにさせてから…

喉をゴロゴロいわせているやや大きめ猫をナデナデする。

口元に手をやるとペロペロ舐めてくれたが、舌がやすりのようにザラザラしていた。顔を舐められたら痛そうだ。

猫アレルギーのオレでも涙&鼻水ダラダラにならなかったので、チーターの毛は猫ほどは抜けにくいのかもしれん。ナミビアのキートマンスフープにチーターをペットとして飼っている人がいたが、猫アレルギー持ちでもチーターなら飼えるぞ。

毎日が暴動

「昔の治安はこうだった」なんて話ほど情報として無価値なものはないが、あくまで昔の記録として。

数年後に「もうナイロビはそれほどでもなくて、ダルエスサラームの方が危ない」なんて話も聞いたが、オレが行った時のナイロビは東アフリカで一番治安が悪かった気がする。

当時、ガイドブックにこんなことが書いてあった。

都市の庶民の生活がわかるのはこの地域なのだが、残念ながら現在は最危険地帯で決して行ってはいけない。ナイロビの治安は昼夜を問わず著しく悪化しているため、タウン中心部以外は昼間でも決して歩かないでほしい。

やだ…こわい!!

でも…宿がその“最危険地帯”とやらのど真ん中にあるから、もはやどうしようもない。

日中の宿周辺には通り沿いに数多くの露天商が出ていた。

衣類とか、靴とか、生活用品を売っているのだが、どうやらその露天商たち同士で縄張り争いをしているらしかった。

すると警察が出動し、パンパンパンッと露天商たちに向かって催涙弾を発射。

一通り催涙弾を撃ち込んだら、さっさと帰ってゆく。

取り締まるとか、仲裁するとか、一切しない。パッと来てパンパンパンッと撃ってパッと帰る…それだけ。

その後、怒り狂った露天商たちが暴徒化して投石を始めるころには警察は1人も残っておらず無法地帯と化す。

暴徒化した露店商たちが白い乗用車に投石しているところ。

この後、白い乗用車はフロントガラスを割られながらも暴徒たちに突っ込んでゆき、何人か轢き殺しそうになりながら逃げ切っていた。

面白いもので、走っているマタトゥに向かっては石を投げない。たぶん投げたら投げたでマタトゥのドライバーたちも徒党を組んで仕返ししてくるので、露店商 vs マタトゥの抗争になる。

へ~、彼らも無差別に投石しているわけではないんだぁ!

と、のんきに宿の屋上から見学していたら暴徒たちに見付かって石を投げられた。

しばらくは毎日やってたな…

暴動になって警察が来るのではない、毎日警察が催涙弾を撃つだけ撃って帰ってゆくから暴動になる。

順番が逆だろっ!!と毎日思っていた。

宿にいる時に暴動が起こるのは別にいい。

銃声のような催涙弾の発射音が聞こえたら窓から離れて、あとは暴徒が暴れ終わるのを待つだけ。その間は一切外出できなくなるのは困るけど。

困るのが、外出中に暴動になっていた時である。

さぁ、帰ろう!と宿に向かって歩いていると…宿の方向からケニア人たちがワーッとこちらに向かって走って逃げてくる。

わっ?!

とりあえず反射的に皆と一緒になってワーッと逃げる。

そろそろいいかな?と思って、また宿に向かうとまたワーッと走ってくるので一緒になってワーッと逃げる。

いつまで経っても宿に近づけん!!

よくパソコンを持ち歩いて外出していたのだが、ナイロビにいた頃からだろうか?

貴重品を持って出歩く時は、地元のスーパーのビニール袋に入れて持ち歩くようになった。

いかに頑丈なカバンに入れていようがナイフや拳銃を出されて奪われたら意味がないので、見た目が「あなたにもお馴染み!あのスーパーからの帰りです」風になる地元スーパーのビニール袋は最強の防犯グッズだと思ってるオレ。

旅人交差点

ナイロビでは色々な旅人に会った。

中国で買ったというママチャリに乗って上海からナイロビまで来てた人もいたな…そういえば。

しかもチベットを越えてきたとか言ってたぞ。

はっきりとは覚えていないけど、たしか…1カ月半とか2カ月とか「ウソでしょ?!」と思うくらい信じられない超高速でケニアまでママチャリで来ていた。

寝る時はママチャリの横に片膝をついてサドルに突っ伏して寝るとか…食事は基本コーラで、チャリを漕ぎながら飲んで空腹を満たしているとか…まともに寝ない食べないでひたすらにママチャリを漕いで来たみたい。

なにかの修行中か…なにかの世界記録に挑戦中か…もしくは真正変態の部類と思われるが、疾風のごとく現れて疾風のごとく去って行ったので、彼の詳しい素性はよく分からん。

ナイロビはそんな旅人たちが交差する町だ。

欧米人も含めてそのほとんどはアフリカ大陸を北から南に向かって旅する南下組で、エジプト→スーダン→エチオピアと抜けてケニアにやって来る。

一方、北上組はほとんどおらず、オレも含めて3人しかいなかった。

そんなアフリカ南下組から「エチオピアとケニア間の移動はむちゃくちゃハード」と脅かされていた。

なんでも、ローリーと呼ばれる邪悪な乗り物の荷台で貨物以下の扱いを受けながら、酷い時には24時間近く揺られることもあるらしい。

ローリーの荷台で24時間だって!?

他人の不幸は蜜の味である。

正直、( *´艸`)プププと思っていた。

なぜならオレはそんなローリーなどという聞いたこともない乗り物に乗るつもりもないし、実際に乗らないからだ。

つい最近になってナイロビからエチオピアとの国境までバスという聞いたことのある乗り物が登場したという情報を耳にしていた。オレは馴染みのある乗り物バスで行く!

大体、なんだよローリーって?!

エチオピアとの国境に行くバスは、ナイロビのイーストリー地区10thストリートから出ていた。

ソマリ人街イーストリー地区の中にあって、10thストリートは“リトル・エチオピア”と化している。要するにナイロビの中にあるソマリ人街の中にあるエチオピア人街である。

Dan Kori / korispective.de, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

ここで翌日のナイロビ発モヤレ(エチオピア国境の町)行のバス・チケットを買った。

さぁ、いよいよエチオピアを目指して出発だ!!

荷物をまとめ、「バス移動だし水は小さいPETボトルでいっか」とバス移動を念頭にした準備をしてバス会社に向かった。

前日バス・チケットを買ったお兄さんに「あれ?バスはどこ?」と聞くと「ない」と一言。

はぁ!?

意味が分からん。

「今は雨季だからバスは走れない。だから代わりにローリーを押さえておいた」

いや、もっと意味が分からん。

今は雨季だからって…今日が雨季なら昨日も雨季だろうがっ!!

数カ月前とか数週間前ではなく、昨日ここに来て「ローリーじゃないよね?バスだよね?」って念押ししてバスのチケットをあなたから買いましたよね?

詐欺じゃん!!

バスと偽ってチケットを販売し、オレをその気にさせておいて実際に待っていたのはローリーだった詐欺罪!!

ローリーとは、大型トラックのことである。

バス会社のやつは信用ならん!と、ローリーの乗客に聞いて回るが…確かにこの時期はバスが走っておらず、しかもオレが買った“バスチケット”の値段はローリーの料金と同じで他の人より高く払ったわけでもなかった。

え…ホントにローリーしかないの?

ローリーに乗るなら乗るで、前日に「雨季だからバスはない。ローリーしかない」と言ってくれていたら、こちらもそれなりの準備や心構えもしたが、バスで行く気満々だったから準備も心構えもない。

なぜあいつはチケットを売る時にウソをついたのか、未だに謎だ。

ローリーの荷台で24時間?!( *´艸`)プププ

と他人の不幸を笑っていたオレは、まさかの詐欺被害に遭ってローリーの荷台でエチオピアとの国境を目指す羽目になった。

しかも、最終的にローリーの荷台で揺られていたのは55時間という、聞いていた話の倍以上の時間がかかった。

このローリー移動が人生でワースト1位というのは、今も揺るがない。

ザンビアの尻地獄バスもしんどかったな…とか、インドネシアでの7泊8日の船旅もしんどかったな…とか、フローレンス島のジェットコースターバスもしんどかったな…とか、スラバヤからデンパサールまでの夜行バスは隣の席がひったくりでずっとオレの荷物を力づくで奪おうとしてきて戦っていたら一睡もできなかったかな…とか、タイで乗った木造船が荒波に揉まれてメキメキいって窓枠が弾け飛んで波が船内に大量に入ってきた時は死ぬかと思ったな…とか色々あるが、よく考えたらこれらすべて一応は旅客輸送の乗り物である。

ローリーは物資輸送の乗り物。そもそもジャンルからして違う。

投げ銭Doneru

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