モバイルマネーと無縁な旅行者は、現金が必要です。
ソマリランドでは、USドルとソマリランド・シリングの2つの通貨が併用されています。
このソマリランド・シリングは、ソマリランド銀行という中央銀行が発行している通貨なのですが・・・
沿ドニエストル・ルーブルと同様に、勝手に独立を宣言した自称国家がこれまた勝手に発行している通貨なので1歩でも領内から出ればタダの紙くずになります。
今年1月時点での為替レートは、1USドル=6500~7000ソマリランド・シリング。
このソマリランド・シリングがまた不思議なんです。
例えば、沿ドニエストル共和国・・・
領内は沿ドニエストル・ルーブルしか流通していません。
だから必然的に沿ドニエストル・ルーブルの需要があるのは分かりますね。
例えば、ジンバブエ・・・
オレが行った頃のジンバブエは、歴史上最悪レベルのハイパーインフレの序章がはじまっていました。
あそこは本来は二重通貨ではないからジンバブエドルしか国内に流通していない建前なのですが、ジンバブエドルの信用と価値が無さ過ぎて、実際にはジンバブエ人たちは通貨価値が安定したユーロかUSドル、南アフリカ・ランドを欲しがりました。
ジンバブエドルで払おうとして「いらない」と言われたこともあります。
結局、価値がゼロになったジンバブエドルは廃止され、今のジンバブエは法的に9つの通貨が流通する多重通貨制になっていますが、現実的に流通しているのはUSドルと南アフリカ・ランドです。
で、ソマリランド・シリングですが・・・
国際的には信用ゼロの紙くず通貨です。
それに比べて、USドルは基軸通貨で世界中使えない場所はない世界最強通貨。
アメリカが大嫌いなイランや北朝鮮だって、USドルは大好きじゃないですか!?
普通なら、USドルとソマリランド・シリングが両方流通しているなら、USドルの方を欲しがるに決まっている。
欲しがるに決まっている・・・はずなのですが、ソマリランドは案外とそうでもなかったので驚いたわけです。
はっきり言って、どちらで払ってもいいんです。
せっかく外国人旅行者がお金を払うと言っているのに、シリングを嫌がって「USドルでくれ」と言われることは一度もなかったですね。
「どっちでもいいよ」と言われました。
そもそもソマリランド・シリング自体の必要性がオレには分からないのに、なぜだ?
友だちと話をしていて、ソマリランド・シリングの存在意義のひとつに補助通貨の役割があるんじゃねーか?というのが出ました。
すべての財やサービスが1USドル単位であるわけではありません。
物価水準を考えれば1USドル未満のものだってあるわけで、その場合にソマリランド・シリングが役に立ちます。
例えば、1USドル50セント相当額のものを買う時に、10,500シリングで払ってもいいし、1USドル+3,500シリングで払ってもいい。
だけど、100USドルのものだって「シリングで払いたい」って言えば問題なく払えるんです。
ちなみにソマリランド・シリングは変動相場制ですが、レートは外国為替市場で決定するわけではありません。
『ハワラ』と呼ばれるイスラーム世界の闇送金システムの業者が為替レートを決めています。
一応、ソマリランド銀行という中央銀行は存在していますが、為替レートを変動させるだけの介入が出来るパワーはないらしい。
そんなソマリランド・シリングですが、世界165通貨中で比較した対USドルの上昇率では、直近1年間で60%も上昇した最強通貨だという話(ブルームバーグのレポート)もあります。
つまり、1年前にUSドルからソマリランド・シリングに両替して、今シリングからUSドルに再両替すれば、たった1年で1.6倍に増えちゃったことになると。
ただ、これも意味が分からないんです。
二重通貨制のソマリランドの場合、物価も為替レートで変動していないとおかしいと思うんだけど・・・
例えば、お店に入って飯を食うと「2ドル!」と言われます。
オレが「シリングで!」と言うと、店員はその時の為替レートで計算して「14,000シリング!」と答えるわけです。
ということは・・・1年前の為替レートは60%低かったわけだから、同じ2ドルでも23,340シリングだったわけで・・・お店の値段もシリングだけで考えれば60%安くなってることになるんじゃねーの?
でも、ドル換算すれば物価は変わってないから・・・と、考えるとやっぱりソマリランド・シリングの意味がわからん!
一応、商業銀行も存在するには存在するんだけど、国内送金はモバイルマネー口座ですればいいし、海外送金はハワラですればいいし、両替も両替商ですればいいので、ソマリランドにおける銀行の存在意義は相対的に低くなります。
両替商は、ハルゲイサの中心部で列になって露店を出しています。
最高額紙幣が5000シリング札なので、今の為替でいえば70円かな?
20USドルだけ両替したのでそこまでの札束にはなりませんでしたが、100USドルを両替してたら大変なことになってました。
1シリング硬貨もあるにはあるらしいですが、硬貨を一度もみなかったし、そもそも使い道がないと思います。
両替して札束になるのが面倒だから、旅行中は細かいお金はシリングで払って、宿代とかはドルで払っていました。
100USドル札をドルで細かくしたい時とか両替商に頼めばいいから、なかなか便利な存在です。
ちなみに、外国人だからと言って悪いレートを言ってぼったくってくることもありません。
お店やタクシーも多少は値段交渉は必要ですが、平均すれば海外の中でも正直な方で楽でしたね。