町の雰囲気
乗合タクシーが首都ハルゲイサに入り、町の雰囲気を見て最初に抱いた印象は・・・・
例えば、沿ドニエストル共和国の首都ティラスポリ。
元々が「強大なソビエト連邦の再来」を望んでいた自称国家というのもありますが、社会主義臭のする寂しい感じでした。
例えば、ナゴルノ・カラバフ共和国の首都ステパナケルト。
人口5万人らしく、ただの田舎町で寂しい感じでした。
南オセチア共和国の首都ツヒンヴァリはどうだったか?思い出そうとしてみましたが、よく考えたらオレはツヒンヴァリを通り越して警察に確保されているからツヒンヴァリは全く知らなかった・・・
いずれにしても、他の自称国家たちと比べても人口70万人のソマリランドの首都ハルゲイサの活気は飛び抜けています。
自称国家らしくないというか・・・
オレが知っている自称国家とは違って、経済活動も活発そうで賑わっています。
街中をたくさんの人たちが歩いていました。
歩いている人たちを観察していたのですが、どう見てもソマリ人っぽくない人もちらほらいます。
ニカブを着用した女性でしたが、あの肌の白さと目の感じはアラブ人としか思えない。
町中に立ち並ぶ店の看板などを見ていても、中東・湾岸諸国との貿易が活発そうです。
実際に、主要貿易相手国はサウジアラビアやUAEらしいので、これらの国々から仕事でソマリランドに来ている人も多いのかも知れないですね。
モバイルマネーの普及
ハルゲイサにある店の看板を見ていて、よく目にするのが金融関係です。
銀行はそこまで多くみませんでしたが、両替はもちろんのこと送金サービスの店が非常に多い。
オレが行った今年1月には、ソマリランドではクレジットカードは一切使えませんでした。
今年の3月に「ソマリランドで初めてクレジットカードが使えるようになって、ハルゲイサにクレジットカード対応ATMが3台設置された」というニュースが出ていましたが、多分クレジットカードの普及は遅いと思います。
その代わり・・・ソマリランドを含むソマリアはモバイルマネーが世界で最も浸透している場所のひとつなのです。
日本でいうところのEdyとかモバイルSuicaのような電子マネーの一種だけど、携帯電話通信網を使ったオンライン方式の決済という点では別物です。
乗合タクシーに乗っていた時のこと。
乗客を乗せたまま、給油するためにガソリンスタンドに入ったタクシー。
車内から観察していると、給油機に携帯番号が書かれた紙は貼られていました。
給油が終わった運ちゃんはお金を払わず、携帯番号が書かれた紙を見ながら自分の携帯をいじっています。
すると、ガソリンスタンドの店員も携帯をいじり出しました。
2人が携帯をいじり終ると、運ちゃんは車に戻ってきてそのままガソリンスタンドを出ちゃいました。
現金で払わず、携帯のSMS(ショートメッセージ)を使ったモバイルマネー決済をしてたんですねぇ。
オレはソマリランドでTelesomとSomtelの看板しか目につかなかったので、勝手に携帯電話のキャリアは2社だと思っていたのですが、実際には6社あるらしい。
エチオピアがたった1社しかないのに、ソマリランドだけで6社もあるって!!
日本よりも多いのだ。
とは言っても、最大手のTelesomがシェア85%もあって、残りの5社が15%を分け合うという状態らしいです。
このTelesomが提供しているモバイルマネーサービスをZAADといいます。
世界で5番目にモバイルマネーサービスを始めたそうです。
ZAADの使い方は・・・
最寄のZAADショップに行き、顔写真1枚を持ってZAAD口座を開設すると4桁のPINが発行されます。
続いて、ZAADショップで現金を払ってZAAD口座にチャージします。
あとは携帯電話から*888#をダイアルした後に、自分のPINをダイアルし、1を押すと残高照会。
自分のPINをダイアルした後に2を押して、ZAAD口座を持っている相手の電話番号を押して、金額を押すと送金。
ZAADショップに行き、自分のPINをダイアルした後に3を押して、そのZAADショップのID番号を押して、希望金額を押すとその場で出金が出来ます。
ZAAD口座ではない、異なる携帯電話通信会社のモバイルマネー口座にも送金できます。
銀行を介さないモバイルバンキングみたいなもんですね。
サービスに手数料はかからないので送金も無料。
会社によっては、従業員への給料をZAAD口座に送金する会社もあるらしいです。
たぶん、銀行が発達していないからこういうサービスが発達するのかと。
そんなTelesomが圧倒的シェアを誇るソマリランドの携帯電話市場に殴り込みをかけたのが6番目に参入したSomtel。
Somtelの親会社は日本では全く知られていませんが、ダハブシールという会社。
ウエスタンユニオンとか、マネーグラムとか欧米の会社は日本でも有名ですが、ダハブシールだって世界144カ国に展開する国際送金サービスの世界大手です。
このダハブシール、本社こそドバイにありますが、実はソマリランドの会社なんです。
世界144カ国に展開する2万4000のダハブシールの支店や代理店からソマリランドに送金すると、5分以内にSomtelのモバイルマネー口座に入金されて「お金が入金されましたよ」というお知らせメールが届く金融サービスを展開しようとしているそうです。
銀行を必要としないサービスを構築しようというわけです。
実は・・・恐ろしくキャッシュレス化している国ソマリランド。
まぁ、旅行者であるオレにはモバイルマネーはあまり関係ないし・・・キャッシュだけで旅行していたわけなんだけど、この点でもソマリランドは不思議でした。