最近読んだ本を2冊。
三浦英之著『太陽の子 – 日本がアフリカに置き去りにした秘密』
同タイトルのテレビドラマもあるが、まったく別の話。
アフリカはコンゴ(DRC)にいる日本人残留児のルポルタージュ。
1970~80年代、資源を求めた日本がアフリカ大陸に残したものは、巨大な開発計画の失敗とさび付いた採掘工場群。そして、コンゴ人女性との間に生まれた子どもたちだった。
実はこの話題を8年前の2016年に『忘れ去られた人々』としてブログに書いたことがある。その次のブログでも同じ話題で書いている。
きっかけはFrance24の『Katanga’s Forgotten people』という報道なんだけど、偶然にも朝日新聞記者・三浦氏も同時期にこのFrance24の報道のことを知って取材をはじめたようだ。
France24の報道は「1970~80年代、日本鉱業(現JX金属)が主になって開発したムソシ鉱山で働いていた日本人の男たちが、鉱山近くの村に住む娘たちの間に多くの子供を作り、撤退する際に子供たちを毒殺処分して帰国していった」という内容。
ほぼ同時期にこの報道を知り、オレはブログに「なんか…(毒殺)やってそう!」と適当に書き、三浦氏は現地に取材に行った。
不思議なのが、France24の報道が出たのは2010年、偶々オレも三浦氏も知るのがそれから6年後の2016年。
そして(これはオレは知らなかったが)2016年6月にイギリスのBBCもFrance24とほぼ同じ内容の記事をいきなり配信したらしい。
偶々とはいえ、なんで急にみんなして2016年なんだろ?
自分が何きっかけでこのFrance24の報道を知ったか?全く覚えていないが、2016年にGoogleなのかTwitterなのかFacebookなのか知らんがアルゴリズムが変更になって6年も前のFrance24の報道が急に目につきやすくなった…とか? それが色んなスイッチを押して行って、三浦氏が知るきっかけにもなり、オレが知るきっかけにもなり、BBCが急に同じような記事を配信するきっかけにもなったとか?
もしくは海外のインフルエンサーが6年前の“ショッキング”なネタを掘り起こしてきて、それがちょいバズりして急に注目を集めたか? ちなみに2016年にTwitter上でこの話題は全くバズっていなかった。話題に触れているツイートはちらほらあるものの、どれもいいねは全く付いていないし、リツイートもされていない。
DRCのカタンガ州に注目が集まるなんて、2016年に限らずその前もその後もないだろうから不思議すぎる。ちなみにカタンガ州が日本と全く関係ないか?と言えば、そんなことはない。広島・長崎に投下された原子爆弾のウランはカタンガ州シンコロブエで採掘されたもの。
さて、個人的2016年問題はどうでもいいとして、ここ最近読んだ本の中では一番面白かった。
もちろん、自分が情報としては薄っすら聞いたことがあったテーマをがっつり扱った内容だからというのはある。
でも、少し信じがたいFrance24やBBCの報道に対する疑問①鉱山で働いていた日本人が近くの村に住む娘たちの間に子供をたくさん作ったのは本当なのか?②撤退時に子供たちを毒殺処分したというのは本当なのか?を現地取材を通じて徐々に解き明かしていくルポとしての面白さは、別に事前情報として知っていたか知らなかったかは関係ない。
France24の後追いで、“世界のBBC”が6年も経った2016年に、なぜほぼ同じ内容の記事を配信したのか?裏事情はなかなかDRCっぽい。
本を読んでいて少し思ったのだが…
「海外に進出した日本企業の日本人たち」と聞いて、いわゆる“エリート的”な海外駐在員をイメージしてしまうと背景を読み誤るかもしれん。
もちろん管理職クラスは今のイメージに近い海外駐在員かもしれんが、現場の人間ってどうだったんだろう?
有名な長崎の軍艦島(1974年閉山)に象徴されるように、1960年代に日本の国内鉱業が衰退し、鉱夫が人余りになった1970年代。
「国内の鉱山が立ちゆかなくなり、北海道や秋田、茨城などから送り込まれてきた人たち」が、遠いアフリカの、ザイール(現DRC)とかいう、カタンガ州とかいうわけのわからない場所で「ぞっとするような」「昔の監獄さながらの」劣悪な環境に何年も閉じ込められていたようだから、今のイメージのような“海外駐在”とは違っていたのは確かだろう。
「まるで刑務所のようなところで(中略)総務課の人にこう注意したんだよ。『これじゃあまりにもひどすぎるよ、なんとかならないのかね』って。すると総務課の人にこう言い返されたんだ。『これでも良い方なんですよ。先生は彼らが日本でどのような暮らしをしているか、ご存じないでしょ?』って」
エリートならやらないだろうけど、社会の最底辺として職業差別すらされていた鉱夫だから…という話ではなく、「これでも日本より良い方だろ?」という考え方を持つ会社に監獄みたいな所に数年間軟禁状態にされる環境ってどうなんだろ?という。
それでいて、インターネットもない時代に人為的に隔離されてるわけではないが実質的に隔離状態の閉鎖的環境下にいて、外界とのほぼ唯一の接点が近所の村でそこに若い娘がいたら…
どうなんでしょ?
関卓中著『地球上の中華料理店をめぐる冒険 – 5大陸15カ国「中国人ディアスポラ」たちの物語』
中国系カナダ人の映像作家の著者が世界中にある中華料理店をめぐったドキュメンタリーシリーズ『チャイニーズ・レストラン』を書籍化したもの。
カナダ、イスラエル、トリニダード・トバゴ、ケニア、モーリシャス、南アフリカ、マダガスカル、トルコ、ノルウェー、キューバ、ブラジル、インド、アルゼンチン、ペルー
あれ?本のタイトルは15カ国だけど、14カ国なんですけど…
あとがきの『日本版によせて』の日本が入って15なのか?
トルコはイスタンブールにある中華料理店を開いたのは「中国から歩いてやってきた男」として伝説になった中国人だった。
歩いてトルコまで来たというのはさすがにないだろうが、国民党の指導者として国共内戦を戦い、共産党に追われる形でヒマラヤ山脈を歩いて越えて中国を脱出し、最終的にトルコに流れ着いて中華料理店をはじめたらしい。
もちろん“中華料理店をめぐる”本なので中華料理の話がメインなのだが、付随する小ネタというか背景の話も面白かった。
世界中にある華人の互助コミュニティ『龍岡親義公所』とか、この本で初めて知った。
劉、関、張、趙の4つの氏姓を対象にした血縁団体なんだって。
劉備、関羽、張飛、趙雲から来てるとか…
日本も負けじと似たような互助コミュニティ作ればいいのに。
近衛、鷹司、九条、二条、一条を対象にしていて、ほぼ誰も入れないコミュニティ。
藤原家の嫡流、公家の中でも最高の五摂家のみを対象にした間口が狭すぎる血縁団体。
逆に佐藤、鈴木、高橋、田中の苗字を対象にしたら、間口が広すぎるし、もはや血縁団体じゃなくなる。
中華料理のことだけじゃない華僑目線の旅の本。