前々から臭っていたが、ますますエチオピアがキナ臭くなってるな。
最悪の場合、エチオピア最北端のティグレ州が独立を宣言してエチオピア連邦政府と独立戦争…なんてケースも無きにしも非ず。
独立うんぬんの可能性は低いとしても、大規模な混乱に発展する可能性はけっこう高い。
今週10月6日、エチオピア連邦議会は「ティグレ州議会および州政府とのあらゆる種類の関係を断ち切る」決議を可決。
2カ月前の報道「ወታደራዊ ትዕይንት በትግራይ ክልል」では、州都メケレでティグレ州側が軍事パレードをして連邦政府を威嚇していたが、ついに連邦政府が「ティグレ州とは絶交だ」と宣言したと。
メケレで軍事パレードね…
ティグレ州の州都とか言ってもただの田舎町で、なんにもない町だったな。
エチオピアは多民族国家だけど、つい最近まで全人口の6%にしか満たないティグレ人が政治や軍を牛耳ってきた。そもそも今のエチオピア連邦政府を樹立したのが、ティグレ人民解放戦線を中心とする与党連合EPRDFというのもあって、ティグレ人が優遇されていたのだ。
一方、最大民族オロモ人は人口の3分の1を占めるのにずっと虐げられてきた。
ハイレ・セラシエが最後の皇帝になったソロモン王朝(エチオピア帝国)はアムハラ人の支配だったし、アムハラ人の次はティグレ人かよ!的な。
前回のオリンピックで、マラソンのエチオピア選手が民族弾圧に抗議するポーズで2位でゴールインして、その後に亡命したのも彼がオロモ人だから。
そんなエチオピアで2018年に首相になったのがアビー・アハメド首相(オロモ人)で、去年のノーベル平和賞を受賞した人だ。
賞を受賞するちょっと前の6月、アビー政権下でクーデター未遂が起こっている。
その時にサアル・メコネン陸軍参謀総長(ティグレ人)が暗殺され、たまたま一緒にいたゲザエ・アベラ退役少将(ティグレ人)も一緒に殺されている。
このクーデターはアサミネウ・ツィゲ准将(アムハラ人)が首謀したとして後に軍から射殺された。
暗殺されたサアル陸軍参謀総長の後任として任命されたのがオロモ人のアデム・モハメド将軍で、初めてティグレ人以外が陸軍のトップになった。
さらに、アデム・モハメド将軍の後釜として諜報機関・国家情報治安局(NISS)トップの座についたのはデメラシュ・ゲブレミカエル新長官(オロモ人)。
ついでに言えばケンア・ヤデッタ国防大臣もオロモ人だ。
少しうがった見方をすれば、たまたま昨年のクーデター未遂があった“おかげ”でエチオピア軍のトップからティグレ人を一掃してオロモ人で占めることが出来た、とも言える。
しかもクーデターを画策したのはアムハラ人だったから、アムハラ人反乱分子も潰すことが出来て一石二鳥。
実際のところ、本当にアサミネウ・ツィゲ准将(アムハラ人)が陸軍参謀総長の暗殺も首謀したのか?は、死人に口なしで分からない。本当にそうかもしれないし、エチオピア政府がそういう設定にしたのかもしれない。
そして去年の12月に、ティグレ人民解放戦線を中心とする与党連合EPRDFは解散。
ティグレ人民解放戦線だけを仲間外れにして、それ以外のみんなで新たに『繁栄党』を結成。
本当は今年2020年に連邦議会総選挙がある予定だったのがコロナのせいで延期に。
「総選挙をしていないのに政権与党の座に留まっている『繫栄党』に法的な正統性はない」というのが、仲間外れにされたティグレ人民解放戦線の言い分。
一方のティグレ州では地方選挙を予定通り実施して、ティグレ人民解放戦線が州議会議席の98%を獲得。
「勝手にやった地方選挙だからティグレ州議会の『ティグレ人民解放戦線』に法的な正統性はない」というのが、エチオピア政府の言い分。
そんな中で今週10月6日、エチオピア連邦議会は「ティグレ州議会および州政府とのあらゆる種類の関係を断ち切る」決議を可決したと。
個人的には、アビー首相が本当にノーベル平和賞に値する政治家なのか?の判断はまだ出来ないかな。アウンサンスーチー・パターンも有り得なくはない。
ノーベル平和賞に決まったエチオピア首相──これを喜ばないエチオピア人とは
本当に立派な人かもしれないし、多民族国家のパンドラの箱を開けて変容するかもしれない。
なんとなく政権と軍の中枢からティグレ人を排除してオロモ人を重用するのがいささか急すぎる気がしないでもない。たぶん民族間対立が先鋭化していく中で疑心暗鬼になって、自分と同じ民族の方が信用できる心理状態なのかもしれないけど。
とりあえずティグレ人とどう折り合いをつけるか?を見てから評価しよう。