平壌地下鉄
「続いては地下鉄に乗りまーす!!」
ガイドさんの声を聞いて、他のツアーメイトたちもテンション急上昇。
それを見てガイドさんが「あら、そんなに地下鉄が好きなの? 自分の国に地下鉄はないの?」
いや、地下鉄が好きだからテンションが上がったんじゃなくて、今までの連続プロパガンダ責めに飽きてたから喜んだだけなんだけどね・・・
平壌の地下鉄は、南北に縦断するチョンリマ線と、東西に横断するヒョクシン線の2路線があります。
運賃
運賃は全線均一で5北朝鮮ウォン(KPW)。
これは市内を走る路面電車も同じだとか。
この5KPWが「一体幾らなのか?」というのは、実は答えが難しい。
一応、ホテルに書いてあった為替レートはメモしてきましたが、それによると・・・
0.9円 | = | 1ウォン |
1ユーロ | = | 140ウォン |
1USドル | = | 100ウォン |
1人民元 | = | 14ウォン |
1スイスフラン | = | 87ウォン |
だから、地下鉄の運賃は4.5円ということになります。
ただし!これはあくまで公式レートの話で、実際にはデノミ(通貨単位を1/100に切り下げ)失敗とハイパーインフレーション(6000%物価上昇)によって全く違う闇レートが存在するかと・・・
旅行者が北朝鮮で“両替”という行為自体をしないので実際の闇レートは分かりませんが、今年初めのニュースによればデノミ後にKPWは大暴落しゴミくず同然になったとか。
予想では、5KPWは4.5円から0.025円の間・・・じゃない?
体験乗車
最近まで、外国人旅行者はチョンリマ線の復興駅から次の栄光駅までの2駅間しか地下鉄に乗車が出来なかったらしいですが、オレらは6駅間を乗車し、復興駅と栄光駅、そして凱旋駅の3駅でホームを見学。
路線図として見るとこんな感じで、赤字が乗車した区間です。
チョンリマ線: 復興駅 ⇒ 栄光駅 ⇒ 烽火駅 ⇒ 勝利駅 ⇒ 統一駅 ⇒ 凱旋駅 ⇒ 戦友駅 ⇒ 紅星駅
駅名だけでも、社会主義を猛烈アピール中!
ちなみにヒョクシン線には楽園駅とかあるし・・・
では、まず復興駅から地下鉄に入ってみましょう。
正面の壁に何やら『!』マーク付きのスローガンが彫ってあります。
どうやら『21세기의 태양 김정일장군 만세!』と書いてあるようで、これを翻訳してみると・・・
『21世紀の太陽 金正日将軍 万歳!』
乗り方は、トークンを購入して改札口に入れるとは言ってたけど・・・(一応、見た目は自動)改札口が動いていなかったから不明。
トークンを入れてる人は見なかったけど、多分システムはロシアと一緒だと思います。
オレらもそのまま改札口を抜けたので、本当はどうなのか?不明。
さぁ、改札を抜けたら世界一深いとされる地下鉄へ!
大江戸線の比じゃないですね・・・
地下110mに到達するのに、エスカレーターで2分以上かかりました。
日本ではエスカレーターの速度って毎分30mって聞いたことがあるけど、平壌地下鉄のエスカレーターは毎分50mってことになるから、かなり速い!
エスカレーターが故障した時はどうなるのか?は不明。
いちおう動画も撮ってみました。
スピーカーから歌が流れています。
ちなみにですが、サンクトペテルブルグの地下鉄もかなり深いです。
あちらは、各駅の深さの平均で『世界一深い地下鉄』と主張してるみたいですね。
細かいことは知りませんが、どちらもハンパない深さです。
エスカレーターを降りた後は、地下道が続きます。
平壌の地下鉄は核シェルターとしての役割もあるので、わざとこういう造りをしているんじゃないか?と。
写真で見ても分かる通り、全体的に薄暗い感じです。
地下道を抜けると・・・駅のホームが現れます!!
旧ソ連の国々でも地下鉄は乗りました。
モスクワ、サンクトペテルブルグ、ミンスク、キエフ、トビリシ、バクー、イェレヴァン、タシュケント・・・どこも駅ホームの内装は気合が入ってます。
ただ、どこも撮影禁止!
その点、北朝鮮は地下鉄で写真撮ってもいいってのは変なの。
とは言っても、北朝鮮の場合1人で乗ることは不可能なんですけどね。
使用されている車両は、西ベルリンの地下鉄で使用されていたD型。
D型は1965年で製造中止になっているので、一番新しい車両でも45年前ってことになりますね・・・
ホームの奥には壁一面のモザイク画。
地下鉄の英語パンフレットを買ったのですが、それによると全てのモザイク画には題名が付いているそうです。
これは『労働者たちに囲まれる偉大な指導者金日成同志』。
あれ? 案外ひねりのない題名なのね・・・
通常、日本では広告になっているレール側の壁も、北朝鮮の場合はモザイク画になっています。
こちらは『豊作の歌』。
また、ホームでは新聞が読めるようになっています。
さっそく地下鉄に乗ってみましょう。
乗ろうとしてドアの前でボーっと立った人は不正解ですっ!
ま、それはオレなんですが・・・ドアは“手動”で開けましょう!!
45年以上前の電車ですからね・・・
「黄色い線の内側までお下がりくださ~い!」というアナウンスはありませんが、あまり前に出ると駅員さんに注意されます。
手ブレが残念ですが、唯一写真を撮らせてくれた駅員さん。
たぶん相当若いよ、この子。
おばさん駅員はカメラを向けると逃げて行きました。
オレが買った地下鉄のパンフレットには、駅員さんの働きぶりが写真で紹介されています。
手でグルグル回す電話!!
さぁ、いよいよ電車が出発します。
ドアは閉まる時だけ自動ですが、指を挟まないように注意しましょう。
多分、指くらいだったら取れると思います。
ちなみにですが、グルジアの首都トビリシの地下鉄は首を挟んだら首が飛ぶくらい思いっきりバッチーーン!!と閉まるので、「介錯されたい!」という武士もどきな人以外はムリなご乗車はお止め下さい。
地下鉄の車内はこんな感じになっています。
木目調の車内がレトロ感を倍増させている上に、金日成と金正日の写真がバッチリ飾られていて北朝鮮っぽさを猛烈アピール。
オレが立って写真を撮っていると、乗客のお兄さんが席を立ちあがり「座れ」とジェスチャーしてきました。
まぁ~、北朝鮮人って何て親切なんでしょう?! これも一重に偉大な指導者のご指導のおかげ・・・
と、思うほど純粋な心を持っていないオレは、「チッ、立っていたいのに、皆も注視してるし座らないといけない感じにさせやがって・・・」と、感謝の心など微塵もないまま着席。
ここで、ひとつ興味深い話を・・・
この日の夜、ツアーメイトが話しかけてきました。
「昨日、公園に行った時に私たちを踊りに誘ってきた人たちがいたでしょ? その時に私もおばさんから踊りに誘われて一緒に踊ったんだけど・・・」
「そのおばさんを今日の地下鉄で見た!」
ほほぉ~、偶然にしてはずいぶんと出来過ぎですな・・・
地下鉄で見かけた人の全員が“一般平壌市民”を装ったエキストラの皆さんだとは思えませんが、どうやらここでもエキストラがチラホラと混じっていたようです。
紛れ込ませておいても、あまり意味ねーのにな・・・
次の栄光駅で、ぶらり途中下車。
まさしくソヴィエト様式のデザインですよねー。
ただ、そこは北朝鮮らしく、独自のデザインもあります。
凱旋駅のホームで見たのは・・・
ホームに金日成像!!
地下鉄体験ツアーも、ここ凱旋駅で終了です。
地上に上がるエスカレーターのところに、スローガンが見えます。
このスローガンは『온사회를위대한수령김일성동지의혁명사상으로일색화하자!』って書いてますね。
『全社会を偉大な首領金日成同志の革命思想で一色化しよう!』
という意味みたいです。
さらに、地上に出ると復興駅と同様にスローガンが。
こちらの『위대한주체사상만세!』を翻訳すると・・・
『偉大なチュチェ思想 万歳!』
と書いてあるみたいです。
地下鉄の中も外も、けっこうガッツリと政治思想をアピールしているみたいですね。
オレはハングルを文字としては理解できないので、旅行中も色々とスローガンは目に付きましたが、意味が分からなかったからここまでガッツリだとは思いませんでしたよ。
帰ってきて、写真のスローガンを調べてみたら「これぞ北朝鮮!」ってスローガンだらけで・・・お腹いっぱい。
ちなみに、調べてる間に「偉大な」とか「マンセー」とかくらいなら分かるようになってきた(笑) やたら出てくる単語だから。
ハングルって文字の仕組みが、子音記号と母音記号の組合せで一文字を形成している点でタイ文字と同じだから、勉強したら読めるようになるかも・・・
しねーけど。
翻訳は独特な単語が多くて翻訳ソフトが役に立たなかったです。「革命思想で一色化しよう」とか出てこないもんね。
『의』←読み方も知らないこいつが分からなくて悩んだんだけど、格助詞の働きをするっていうんで、『~の』と訳してみました。
訳し方がどこか間違ってたらゴメンなさい。
さて、凱旋駅(写真)に到着して今日の観光は終わり!と思いきや
この後、さらに2ヶ所も連れ回されるのでした・・・