読んだ本4冊

スポンサーリンク

いつもの読書記録。

屋敷康蔵『震災バブルの怪物たち』

ブログ記事を書籍化したものなんだろか?

いや、分からんけど「元大手住宅メーカー営業マンが見た!聞いた!触れた!小ネタ集」的な印象。書き下ろした本じゃないような気がする…節の長さがけっこうバラバラだし。

福島県いわき市在住の著者が書いた本だが、美談とか悲惨さとかだけではない被災地の問題…要は金の問題はなかなか興味深かった。

「これは心情的なものでもあるんですが…いわき市の津波被災者も、原発避難者も立場的にはほとんど同じだと思うんです。どちらも家を無くして故郷を失ってますからね。でも、片方は数千万から億のお金を手にして、もう片方は一銭ももらえない。その両者が同じ避難所暮らしをしているんだから、格差がより浮き彫りになってしまう」

科学的根拠がよく分からないが、原発を中心にコンパスで描かれた円。

30kmを境に、数千万から億の賠償金を手に入れた被災者と一銭ももらえない被災者が存在すると。もちろん、現実問題としてどこかで線引きは必要というのは分かってるけど、なかなか難しい問題だよな…

平成27年の全国地価上昇率ランキングで1位から10位まで全て福島県いわき市だったって知らなかった。大金を手にした被災者が地価を一気に押し上げ、一銭ももらえなかった被災者が割を食うという構図は、震災→復興という単純な図式じゃなくて…復興の流れの中でも二次的な“被害者”も生んでいるのかなと。

被災地や原発事故について視野を広げる意味では読んでおいて損はない本かと。

東日本大震災関連の本としては、小野一光『震災風俗嬢』も興味ある。

満足度:★★★★☆

旗手啓介『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』

オレが初めてカンボジアに行く4年前の1993年、PKOの文民警察官として派遣されていた日本人警察官が武装勢力に殺された。

なぜ殺されたのか?

その死に迫るノンフィクション本。

イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争で、日本は金だけ出して人は出さなかったとして、戦後クウェート政府がワシントンポストに掲載した感謝広告に日本の名前はなかった。

それがトラウマになった日本は、PKO協力法を成立させて、初めて陸上自衛隊をPKO部隊としてカンボジアに派遣する。ただ、憲法との兼ね合いで国内の世論は紛糾。

とにもかくにも「自衛隊を派遣して国際貢献した」という実績を作りたい日本は、世論を気にしながら超根回しをしてカンボジアの中でも安全な場所を選んで自衛隊を派遣。

一方、そんな自衛隊の影に隠れてほぼ放置プレイだった警察官たち。

ただの交番のお巡りさんたちが、何のトレーニングも受けないままカンボジアの中で最も危険なポルポト派との最前線に派遣される。

いや…言い方は悪いけど「よく殉職者1人で済んだな…」と思うレベル。

PKO自体に賛成の人にも、反対の人にも、どちらにとっても考えさせられるお話。

満足度:★★★★★

ツルティム・ケサン/正木晃『チベット密教』

インド仏教の本流を汲むチベット密教は、解脱への手段として、長らくタブー視されていた「性」まで取り込んだため、興味本位による憶測と恣意的な解釈が先行し、正確な教義や修行法が一般に伝えられることは不幸にして少なかった。しかし、その教えは今日、世界各地の新宗教、現代思想にまで多大な影響を与えている。本書では、その長い歴史と個性的な指導者たちの活動を紹介。さらに、正統派のゲルク派ほか諸派の教義や性的ヨーガを含む具体的な実践=修行法も解説し、チベット密教の本質とその奥にある叡智を明快に解き明かす。

満足度:★★★★☆

楊海英『日本陸軍とモンゴル 興安軍官学校の知られざる戦い』

一九三〇年代に満洲の地で、日本陸軍が関与し、モンゴル人へ軍事教育を施す目的で作られた興安軍官学校。日本の野心と中国からの独立を目論むモンゴルの戦略が交錯する中から生まれた場所だ。本書は軍事力により民族自決をめざすモンゴル人ジョンジョールジャブや徳王らの活動、軍官学校生らが直面したノモンハン戦争から敗戦にいたる満蒙の動向などを描く。帝国日本に支援され、モンゴル草原を疾駆した人びとの物語。

満足度:★★★☆☆
スポンサーリンク
広告(大)
広告(大)

この記事をシェアする

フォローする

関連コンテンツユニット
スポンサーリンク
広告(大)