新ジャンルの旅行記

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今まで全く興味がなかったジャンルの本を読むようになった。

そもそもあまりフィクションは読まないのだが、その中でも特にこのジャンルには関心を持ったことがない。

それが最近になって急に興味を持ち始めたのは、単純に文章の表現技法として面白いものが多いな…と思ったからだ。

もちろん作品によっては直接的な表現を多用しているものもあるが、「どんな発想でそれを思い付いたの?!」的な比喩表現を駆使している本に出会うこともある。

まぁ…まだこのジャンルを読み始めて間もないので沢山の作品を読んでいないが、そのうちイカれた表現を多用するブッ飛んだ作品に出会ってみたい。

めちゃくちゃ読み込んだら、そのジャンルの表現技法を使った旅の本を書こうと思う。

例えば…炎天下のバンコクでトゥクトゥクを止めて乗り込む時の情景をうかみ綾乃風に書くとこんな感じになるんじゃないか?と。

「熱い…」

閉じ込められた熾火が、秘かな炎を上げている。ざわめく疼きが止まらない。止まらない。

「トゥ、トゥ…」

吐く息が震えた。

切なく燃える愉悦が、肉体の中心を駆け抜ける。

「あ…はぁ…はぁ…はぁ…」

肩で大きく息を吸い、握りしめた手を根本から先端までさすり撫でるように持ち上げた。

掌の静脈が、速い脈を打っている。手の甲に汗が滲みだしてきた。

抑えようとしても、我知らず腰がくねりだしてしまう。

「あっ…トゥクトゥク…」

生々しい喘ぎが漏れた。

「奥の…奥の方まで…」

内股をぬめぬめと擦りながら、トゥクトゥクの奥に滑り込んだ。

「ひぅっ、あぅぅっ!」

トゥクトゥクに乗る、ただそれだけのことなのに、疼いて震えてくねりだして喘ぐというね…

官能小説仕立ての旅行記!!

どう?

たぶん…死ぬほど読みづらいだろうけど。

官能小説でも“その場面”の描写以外は普通の文だったりするが、官能小説仕立ての旅行記は作品の最初から最後までずーーっとこんな感じ。

飛行機に乗っても、バスに乗っても、いちいち…

「あぁぁ…はぅぅーっ!!」

という謎の反応を示す主人公。

もうその時点で相当やべぇ奴なんだけど、全ての行動に謎の湿りっ気を出してくるため肝心の話が全く進まないという。

1巻で日本を出国する飛行機に乗って、着いた先の空港からバスに乗り込んで、宿にチェックインするまで。

だって飛行機に乗っても、シートの『ひじ置き』の話で半ページくらい使うから。

肩で大きく息を吸い、握りしめた手でひじ置きの根本から先端まで優しくさすり撫でる。

掌の静脈が、速い脈を打っている。手の甲に汗が滲みだしてきた。

「あ…はぁ…はぁ…はぁ…」

こんな奴がいたらもう心の臓に病気を抱えているだけの話だけどな、冷静に考えたら。

イスタンブールでケバブを食う話を草凪優風に書くとこんな感じ。

ケバブをもう一度頬張ると、頭を上下に振って、みなぎった肉塊に唇をすべらせた。口内で多量に分泌した唾液ごと、じゅるじゅると音をたてて吸いたてた。根元からじゃぶりあげ、最後に先端をチュッと吸う。小刻みにうごめく舌先でケバブの先端をくすぐり、なめらかな舌腹をからみつけた。

「んんんっ…んんんんっ…あああああーっ!」

隣のテーブルでケバブをじゅるじゅると音をたてて吸って、急に「あああーっ!」とか叫び出す奴がいたら普通に恐怖しか覚えないだろうな…

「や、やべぇ奴がいるっ!!」つって。

内容的にエロの要素は一切ないんだけど、バスに乗る度…飯を食べる度…体の芯を熱くして、何やらぬるぬるとした分泌液を出して、すぐ「あぁぁぁーっ!」と叫ぶ。

そんな旅行記に出会ったことがあるだろうか?!

コンセプトからしてだいぶイカれてて面白いと思うけどな…

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