内戦後に行くためのイエメン案内3

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最後は、イエメン南部・中東部をご紹介。

ソコトラ

インド洋に浮かぶ世界自然遺産の島、ソコトラ島。

距離的にはイエメン本土よりもソマリアの方が近い、イエメン領の最南端。

内戦なんか関係なさそうだが、どさくさに紛れてアラブ連合軍(UAE軍)が100名以上で島を“占領”している。

大きさは沖縄本島の3倍ほどで、意外とデカい。デカい割に人口は少なく、最大の町ハディボでも何もない田舎。

このまま後ろを振り返ると…険しい山々がすぐ背後まで迫っている。

北部とは違って頂に武闘派民族が住んでいない、平和な自然の宝庫。

また、北部とは異なりジャンビーヤを差している男の割合が少ない。

「おっ、珍しくジャンビーヤ差してる!」と、写真を撮らせてもらった。

島の北西にカランシアというソコトラ第2の村があり、ここのラグーンがむちゃくちゃキレイ!! 恐ろしく遠浅で、エメラルドグリーンの部分はスネくらいまでの深さしかない。

遠浅過ぎて一切泳げないけどね。

一方、山中に入っていくとソコトラが真の実力を発揮する。『インド洋のガラパゴス』の異名を持つだけあり、固有種が300種類ほどある不思議な植物たちがお出迎え。

山の斜面に生えているのはキノコみたいな形をした竜血樹。ソコトラの代名詞とも言える変な木だが、固有種ではなく大西洋に浮かぶカナリア諸島が原産という謎。

樹液がドラゴンの血みたいに濃い赤色だから竜(Dragon)血(Blood)樹(Tree)らしい。人間の血だって濃い赤色じゃん!と思うが、ファンタジーな世界観を大切にしているのだろう。

枝の先端の葉っぱは松みたいに尖っていそうだが、近づいてみると実際には丸みを帯びているのが分かる。

竜血樹以外にも変な木が沢山生えている。

こんなのとか…

こんなのとか…エイリアンみたいで気持ち悪っ!!と思っていたのだが、『砂漠の薔薇』という異名を持つだけあって花を咲かせるとちょっとかわいい。

キモかわいい。

山中ではエジプトハゲワシが人間を怖がる様子もなく周りを歩き回っていた。

ソコトラにしか生息していない固有種のヘビもいるらしいが、見ていない。

内戦中の今もソコトラ自体は安全だと思うが…残念ながら行く手段がない。

国営イエメニア航空が本土のサユーンとソコトラを結ぶ国内線を週1~2便飛ばしているようだが、肝心のサユーンに行くまでの方法が皆無。今、サユーンの辺りを支配下に置いているのは都落ちしたハーディー大統領率いる『暫定政権』と、暫定政権と同盟関係にある『ハドラマウト氏族同盟』。

空路以外だと、イエメンのアデンから漁船をヒッチして、ソマリア海賊が出る海を何日間かかけて行くかしかない。今、アデンの辺りを支配下に置いているのは、南部の氏族たちの同盟『南部暫定評議会』。

現在戦国時代のイエメンは、シーア派とスンニ派の争いどうこう言われていて、それもそうなんだろうけど、3つどもえ、4つどもえの戦いになってる一番の理由は氏族社会だから。

現在のイエメンを日本の戦国時代で言うと…

フーシ派:伊達家など北の大名連合。南下して都を制圧し、天下統一をもくろむ。

暫定政権:もともと征夷大将軍(大統領)だったハーディー率いる落ち武者たち。外国勢力に助けを求めて、再び都を制圧して名実ともに征夷大将軍への返り咲きを狙う。

ハドラマウト氏族同盟:今川家など中部の大名連合。現在、落ち武者の暫定政権と同盟関係を結んではいるが、そもそも内戦前から政府の言うことをあまり聞かない人たち。

南部暫定評議会:毛利家や島津家など南部の大名連合。天下統一は目指しておらず、南部の独立が目標。勝手に南部で征夷大将軍(大統領)を名乗っている。

アラビア半島のアルカイーダ:主に中部で活動していたならず者集団で、ハドラマウト氏族同盟と敵対関係。戦国時代になって急に勢力を拡大しているが、どの大名連合からも嫌われていて味方はいない。

アラブ連合軍:落ち武者になったハーディー率いる暫定政権にお願いされて内戦に介入してきた外国勢力。

イラン:フーシ派に軍事支援をして天下統一を手助けしている外国勢力。

ソコトラ島はこのイエメン戦国時代のゴタゴタに便乗したUAE軍が勝手に占領して、南部の大名連合『南部暫定評議会』が「けしからん!」となってるとこ。

続いては、イエメン本土に戻って中部の『ハドラマウト氏族同盟』が支配する地域へ。

サユーン

北部の山岳地帯と違い、中部のハドラマウト県はただただ不毛な砂漠が続く。

オレはインド洋沿いの港町ムカッラから北上してサユーンを目指したのだが、車窓から見える町はどこもこんな感じで岩山と同化している。

ムカッラとサユーンの間にはウサマ・ビンラディンのお父さんの生まれ故郷がある。お父さんがイエメンからサウジアラビアに出稼ぎに行って、その後に大成功を収めてビンラディン財閥を作って、息子がやべぇ奴になるというパターン。

そんなハドラマウトの名物は、とんがりこーんレディたち。

内戦前からイエメン政府とハドラマウトの氏族たちの間の情勢は微妙で、首都サナアからのバスは外国人旅行者には一切チケットを売ってくれなかった。

誘拐される可能性があるのは北部だけじゃない。

仕方がないので、政府軍の兵士を護衛に付けて車をチャーターしてイエメンを横断。

ハドラマウト最大の町サユーンには、カシーリー朝時代のスルタンが住んでいた白亜の王宮がある。

シバーム

サユーンにほど近いところにあるのが、『砂漠の摩天楼』シバーム。

3世紀頃から栄えたハドラマウト王国の首都だ。

煉瓦を積み上げただけの耐震性ゼロの築1000年オーバーなビル群が並ぶ。

砂漠地帯なので、当然のことながら死ぬほど暑い。

だから壁に空気の通気口が開けられて、中はなるべく涼しくなるようになっている。

ちなみに、内戦前の話だがアラビア半島のアルカイーダがここシバームで自爆テロ攻撃を行い、韓国人観光客4人が亡くなっている。すぐ崩れちゃうような場所で爆弾を使うんじゃねーよっ!! ここも世界遺産だし。

マーリブ

旧約聖書にも登場するシバの女王で有名なシバ王国の遺跡。

内戦前からこの辺りは政府の実効支配があまり及んでいない特に行きにくい場所であった。

軍の護衛を付けて立ち寄ったけど、実際に行ってみて思ったのは「わざわざ来るまでのほどの場所じゃないかと…」。遠目から写真撮って、近づいてすらいないもん。

いや、似たようなやつで崩れてない町なんて他にいくらでもあるし。

ほら、これだってどこか忘れたけど似たようなもんだろ。

ちなみに、2008年にマーリブで『イエメン日本人観光客誘拐事件』が起こっている。

AFP通信の報道などでは、観光ツアーの車には地元警察の護衛もついていた、検問所で犯行グループと治安部隊が銃撃戦を行ったという情報もあるが詳細は不明。犯行グループは、中央政府の統治が及ばない部族が支配する昔ながらの地域の出身者達であり、解放にあたっては、部族の長老グループが犯行グループを包囲して交渉が行われたという。犯行の目的、具体的な解放条件などは不明だが、8時間弱で日本人観光客は無事解放されるに至った。犯行グループは逃亡し行方不明。

「部族が支配する昔ながらの地域の出身者たち」とか「部族の長老グループ」とか、出てくるワードがとても21世紀とは思えない(笑)

この当時の外務省の注意喚起。

イエメンでは、2009年に入ってから、1月2日にアビヤン州シャクラ地区において南アフリカ人旅行者3名が誘拐される事件が発生(翌日解放)したほか、1月18日にシャブワ州アル・ラウダ地区においてドイツ人技師1名及びイエメン人2名が、地元部族民に誘拐される事件が発生(20日に解放)、3月31日にサヌアから南へ約30キロメートルの付近において、オランダ人2名が誘拐される事件が発生(4月13日に解放)しました。6月11日にはサヌア市郊外において外国医療団(比人5名、インド人4名、エジプト人2名、スーダン人2名)が地元部族民に誘拐される事件が発生(24時間以内に解放)、9月10日にはサヌア市郊外においてウズベク人医師1名が地元部族民に誘拐され、翌日解放されました。今次誘拐事件の以外にも日本人が被害者となった事件として、昨年5月にマアリブ州において観光ツアーに参加していた女性2名が地元部族民に誘拐される事件が発生しました(8時間後に解放)。このように、イエメン各地で外国人を巻き込んだ誘拐事件が多発しており、厳重な注意が必要です。

地元部族民いわく「誘拐は伝統」だそうです。

内戦が終わってイエメンに観光で行けるようになっても、地元部族民に誘拐される可能性は依然と変わらずに「ある」と思っておいた方がいいかと。

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