うむ、やはりM23は鉱山狙いで勢力範囲を拡大してるようだ。
金、スズ、コルタン、コバルト、ダイヤモンドの鉱山を掌握しているらしいが…金相場も史上最高値を更新してるし、ますます価値が上がっている金の成る土地を手に入れたM23。
ダイヤモンド相場も一応はずっと右肩上がりだし。
国連の推計によれば、M23は既に掌握しているルチュル(Rutshuru)、マシシ(Masisi)でのコルタン採掘に税金(みかじめ料)をかけて月に約30万ドル(約4600万円)の収入を得ているそうだ。
最近、コルタン採掘の中心ルバヤ(Rubaya)も掌握したみたいなので、ルチュルとマシシだけでそれだけの税収があったら全体では月に軽く数億円は稼いでそう。
税収だけじゃなく、採掘した現物をルワンダに持ち出してる分もあるだろうし。
他にも、幹線道路を押さえたら通行する全てのヒトとモノから通行料を徴収しているらしく、その収入もある。その場で手書きの領収書をくれるらしいが、M23の発行した領収書では交通費精算しようとしても経理に突き返されそう。
これが2025年2月9日現在のM23の勢力範囲(ピンク色)。
MrBLOCKiron, CC0, via Wikimedia Commons
今は地図の下(南)の南キヴ州に侵入して州都ブカブを巡って攻防戦になっている模様。
たぶん、交通の要衝であるブカブを押さえられたら、コルタンが豊富にあるワリカレ(Walikale)地域、地図外の左上(北東)方向を目指せるのと、ワリカレからそのまま進軍すればこれまた交通の要衝キサンガニ(Kisangani)に攻め込める。
そもそもDRC東部なんてまともな道路が走ってないだろうが、まともじゃないけど数少ない道路を押さえた方が圧倒的に有利。
ブカブ市内はパニックになっているという報道も見たが、ブカブを目指すM23(&ルワンダ軍)を、DRC軍とブルンジ軍が迎え撃っているようだ。
ブカブが落ちたら次はキサンガニがやばくなり、もしキサンガニが落ちたら次は首都キンシャサがやばい。
アフリカの奥地で戦う反政府武装勢力なんていうと、ボロボロのカラシニコフ小銃を持ってるイメージだし、大体は実際にそうなのだが…
M23の装備が、もはやゲリラではないレベルだとか。
南アフリカ軍の退役将校が「見た感じ、イスラエル軍やアメリカ軍の特殊部隊並みの最新鋭の兵器で武装してて、これまでのあそこら辺のゲリラとはレベルが違う」とか言ってて…
全員が全員持ってるわけじゃないだろうが、鹵獲した武器の中にはポーランドの最新アサルトライフル、MSBS GROTライフルがあったり…
中国製のDY-90地対空ミサイル(赤外線誘導)を装備した自走SAM型「倚天」近距離防空システムがあったり…
GPSによって誘導する120mm誘導迫撃砲弾も持ってるらしい。
ポーランド製MSBS GROTライフル?
中国製「倚天」近距離防空システム?
たしか…どちらもルワンダ軍が配備していたような気がするが…
いちおうM23の背後にはルワンダ軍がいるってのは公然の秘密になっているので、
ただのゲリラのくせに最新鋭の兵器で武装してるのなんでだろ~?
と、不思議がってみるのが大人の流儀である。
いや、そんなの実質的にはルワンダ軍だからでしょ!と正直にツッコむと、ルワンダに「西側の陰謀論だ!デマだ!」と怒られる。
ただ、平和維持軍で派兵していた自国の兵14人をM23に殺された南アフリカの大統領が「これ以上の攻撃は宣戦布告とみなす」とルワンダに対して言ったり、ブルンジの大統領がルワンダに対して警告したり、なんで当事者たちはM23じゃなくてルワンダに対して言うんだろ?というのはある。
せっかく秘密にしてるのに。
実は今のM23は2.0である。
1.0は2013年11月にほぼ壊滅させられている。
DRC東部に展開する国連平和維持軍(MONUSCO)が、2013年にPKO史上初めて『介入旅団』を投入。武装勢力を無力化させる強力な火力と機動力を備えた、平和“維持”ではなく平和“執行”のための部隊。
介入旅団の主力だった南アフリカ軍が投入した戦闘ヘリ『ローイヴァルク』の圧倒的火力の前にM23は壊滅。
BoonDock, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
MONUSCO介入旅団のローイヴァルク戦闘ヘリ(2014年・DRC南キヴ州)。
復活したM23(今の2.0)が、近距離防空システムを配備しているのも前轍を踏まないためのものだろな。
ただ、1.0を壊滅させたローイヴァルク戦闘ヘリだが、経費削減のためもういない。
さらに言うと、国連平和維持軍(MONUSCO)自体がすでに段階的に縮小して完全撤退予定。
今がチャーンス!!
力の空白が今回の新生M23の大攻勢にあるのは否定できないかと。
少し古いが『This Is Congo』(2017)は、M23(1.0時代)と戦うDRC軍第42大隊即応コマンド部隊司令官ママドゥ大佐に密着したドキュメンタリー。
ママドゥ大佐の背中からはじまるが…
1:46からの映像とか映画みたい。
そこからDRC情勢とか歴史的背景とか、M23や民兵組織UCPC(コンゴ愛国者連合)のインタビューもあったりと小難しい話が続く…
DRC軍の兵士は薄給だから反武装勢力に寝返るやつも多いみたいな、まぁ興味ない人にとってはつまらないであろう話。
28:40 砲弾飛び交うゴマ攻防戦の最前線で指揮するママドゥ大佐
38:20 M23を撃退し、熱狂的なゴマ市民に迎えられて凱旋するママドゥ大佐
41:00 キンシャサからお偉方が来て、手柄が誰のものかで微妙な雰囲気に
44:05 ママドゥ大佐、待ち伏せ攻撃を受け死亡
身内であるはずのDRC軍の将校2人が、反政府武装勢力に2万ドルを払ってママドゥ大佐を襲撃させたとして逮捕・有罪になっている。キンシャサ(中央政府)がママドゥ大佐のあまりの人気を恐れて暗殺させたというウワサも。
自分の地位が脅かされる恐れがあったり、出世の邪魔になりそうな人がいたら、早めに叩き潰そうと足の引っ張り合いをするDRC軍。
ママドゥ大佐と関係ないが、DRC陸軍で序列2位のアミシ将軍は副業で鉱山会社を設立。軍に警備(公私混同)させて金の違法採掘をやっているというウワサ。
この問題を調査するため2017年に現地入りした国連調査団の専門家(アメリカ国籍、スウェーデン国籍)は拉致され、後に遺体で発見。犯人は捕まっていない。
こんな話、日本人には関係ないと思うかもしれないが知っておいて損はない。
採掘投資で数十億円集金の可能性も 神戸の鉱石採掘関連会社の代表の男らを逮捕DRCでのコバルトや銅の採掘事業への投資詐欺で25億円超の被害があった事件。
典型的なポンジスキームだろっ!?とかの前に…
DRCでの採掘事業なんてカタギが手を出せる世界じゃないから!!
詐欺かどうか以前に『DRCでの採掘事業』って時点でオレならムムってなる。
あと、こういうの止めて欲しい。
被害額25億円超「コンゴ投資」で資金集め逮捕…容疑者が語っていた「そろそろドバイかシンガポールに」得意満面の日々アフリカ・コンゴ共和国でレアメタルの採掘事業
いやいや…詐欺の舞台になったのはコンゴ民主共和国(首都キンシャサ)で、コンゴ共和国(首都ブラザヴィル)は別の国っ!!
オレがあえてDRC(コンゴ民主共和国)って書いてるのは、こういうことになるから。
そもそも同じ国名にしてんじゃねーよ、ややこしい!