錬金術的な負のスパイラル

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最近のウクライナや、ガザのニュースを巡るネット空間を見ていると、どうもゼロイチ思考の人間が多いというか…目立つ気がする。

親ウクライナか、親ロシアか

親パレスチナか、親イスラエルか

まぁ、これくらいなら別にいいんだけど…

一度“親ウクライナ”になったからにはウクライナの全てを肯定し、“親イスラエル”を名乗るからにはイスラエルが何をやっても肯定するみたいな、ピュアな人間が意外と多いな。

当事者たちが「我々が善で、相手は悪。さぁ、あなたはどちらの側に立つ?」みたいな感じで二項対立を煽ってくるのは当然というか、いかに国際世論を味方に付けるか?という思考で動いている以上はそういうものだろうけど、乗っかる方の第三者まで客観視することを忘れるのはどうなんだろ?とは思う。

世界を単純化して捉えて、その上で自分の立場を声高にアピールしていた方が短文投稿では分かりやすくてウケはよさそう。

長ったらしい、しかも白黒はっきりしないブログなんか面白いわけがなく、どちらかに振り切った少し過激なくらいの短文投稿の方がウケるだろうなぁ~と思いながら、この長ったらしいブログを書いている。

「親ウクライナか親ロシアか」はさておき…

「新パレスチナか親イスラエルか」は、ややこし過ぎてめちゃくちゃ難しいところだ。

ひとつ断言できるとすれば、オレは国連安保理でのグテーレス事務総長の以下の発言に完全に同意する。長いけど、一部だけ割愛してほぼ引用。

中東情勢は刻一刻と悲惨さを増しています。
ガザでの戦争は激化しており、地域全体に飛び火する危険があります。
分断が社会を分裂させています。 緊張は沸騰する恐れがあります。
このような重要な時にこそ、原則を明確にすることが重要です。
まずは、民間人を尊重し保護するという基本原則から始めましょう。

私は、10月7日にイスラエルで起こったハマースによる恐るべき前代未聞のテロ行為を明確に非難しました。
意図的な民間人の殺害、負傷、誘拐、そして民間人を標的にしたロケット弾の発射を正当化することはできません。
すべての人質は人道的に扱われ、無条件で直ちに解放されなければなりません。

ハマースによる攻撃は、空白の中で起こったのではないことを認識することも重要です。
パレスチナの人々は56年間、息苦しい占領にさらされてきました。
彼らの土地は入植地によって着実に食い荒らされ、暴力に悩まされ、経済は抑圧され、人々は家を追われ、取り壊されてきました。彼らの苦境を政治的に解決してほしいという希望は消えつつあります。
しかし、パレスチナの人々の不満はハマースによる凄惨な攻撃を正当化することはできません。そして、それらの凄惨な攻撃はパレスチナ人への集団的懲罰を正当化することもできません。

戦争にもルールがあります。

私たちはすべての当事者に対し、国際人道法の下での義務を守り尊重すること、軍事作戦の遂行において民間人を犠牲にしないよう常に配慮すること、病院を尊重し保護すること、そして今日60万人以上のパレスチナ人が避難している国連施設の不可侵性を尊重することを要求しなければなりません。

イスラエル軍によるガザへの容赦ない砲撃、民間人の死傷者数、近隣地域の大規模な破壊は後を絶たず、深く憂慮されます。

私は、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)で働く数十人の国連職員、悲しいことにこの2週間のガザ砲撃で死亡した少なくとも35人を追悼し、敬意を表します。

いかなる武力紛争においても、民間人の保護は最重要です。
民間人を保護するということは、彼らを人間の盾として利用することでは決してありません。
民間人を保護するということは、100万人以上の人々に避難所も食料も水も医薬品も燃料もない南部に避難するよう命じ、さらに南部そのものを爆撃し続けるということではありません。

私は、ガザで目の当たりにしている国際人道法の明白な違反を深く憂慮しています。
武力紛争のいかなる当事者も、国際人道法の上に立つことはできません。

この重大かつ差し迫った危機的状況にあっても、真の平和と安定のための唯一の現実的基盤である「二国家解決」を見失ってはなりません。
イスラエル人は安全保障に対する正当なニーズが具体化されるのを見なければならないし、パレスチナ人は国連決議、国際法、これまでの合意に沿って独立国家に対する正当な願望が実現されるのを見なければなりません。

最後に、私たちは人間の尊厳を守るという原則を明確にしなければなりません。
分極化と人間性の喪失は、偽情報の津波によって煽られています。
私たちは反ユダヤ主義、反イスラーム偏見、そしてあらゆる憎悪の勢力に立ち向かわなければなりません。

原文全文はこちら

このグテーレス事務総長の発言にイスラエルが猛反発して、「テロリストの行為を容認し正当化している」として辞任を要求したと。

難しいのが、親パレスチナであることが親ハマースでもあるという論理は成り立たないんだけど、パレスチナの中でもガザにおいてはハマースが民衆の支持を得ているのは事実ということ。

何かあれば水戸黄門の印籠みたいにナチのホロコーストを持ち出して永遠の被害者面をするイスラエルが、かつて南アフリカがやっていた時は“人類への犯罪”とまで呼ばれたアパルトヘイトをガザで行ってる…

そんなガザで、閉塞“感”ではなく文字通りの閉塞された環境からの打破を願って過激思考のハマースに一定の支持が集まり、そのハマースがテロが起こし…

そんなハマースをイスラエルがナチ呼ばわりする。

もはやカオス過ぎて分からん。

アパルトヘイト vs ナチで、人類への犯罪対決してるの?

ちょっと話はずれるけど、反アパルトヘイト闘争の象徴であるネルソン・マンデラはその著書『自由への長い道』の中でガンジーの非暴力運動に触れている。

状況が闘いかたを決めるのであり、ある特定の方法や戦術が敵を破るのに有効なら、その方法や戦術を用いるべきだという考え方だ。今回の場合、国家の方がわたしたちよりはるかに強大で、力と力の闘いになると、どんな手段で立ち向かってもたたきつぶされてしまう。だから、非暴力はひとつの選択肢というより、やむを得ない現実的な道なのだ。わたしもそういう考えで、ガンジー型の非暴力は、絶対にゆるがせない原則ではなく、状況に応じて用いるべき戦術のひとつだと見ていた。ガンジーは、たとえ自滅につながっても非暴力の戦略を貫くという信念を持っていたが、わたしには原則がそれほどまでに重要だとは思えなかった

平和主義者と知られているマンデラだけど、反アパルトヘイト闘争においてゲリラ戦やテロを否定していなかったし、実際にテロ(インフラの破壊工作)をやっている。

あのマンデラでさえ手段としてのテロを否定しなかったんだからハマースのテロだって仕方ないという話ではなく、抑圧に抵抗する側の心理を知るという意味では参考にはなる。

まぁ、そんなマンデラでも今回のハマースによるテロを肯定するとは思えないけど。

彼の倫理観として…という話じゃなく、民間人を大量殺害するテロを起こすことで、非人道的なアパルトヘイトに対する抵抗の大義というか正当性を対外的に失うような悪手をするとは思えないわけで。

結果的にマンデラの非暴力的“闘いかた”で南アフリカは国際社会から孤立したわけだけど、マンデラがハマースみたいなテロをしていたら果たして国際社会はマンデラに味方してくれていただろうか?

逆に言うと、「状況が闘いかたを決める」とするならば非暴力非服従という戦略が何の効果もなく、対外的に抵抗の大義とか正当性を気にする必要がなかったら…ハマースのように民間人の大量殺害テロを「やむを得ない現実的な道」として選択するやつも出てきてしまうというのはあるかもしれない。

ちなみに…世界中から制裁を受けて国際的に孤立していたアパルトヘイト時代の南アフリカと“西側で唯一”仲が良かったのはイスラエル。一緒に核爆弾を作ったりしたお友だち。

アパルトヘイトのやり方も習ったのか?

かと言って、抑圧されている側のガザで実権を握るハマースも果たして問題解決の一翼を担えるか?となると個人的には大いに疑問。

そもそも、問題が解決しちゃってガザが平和になっちゃったら彼らの存在意義がなくなっちゃうんじゃないの?

ハマースの指導者イスマイール・ハニーヤは、カタール在住で億万長者。

前例としてPLOのアラファト議長もそうだったように、パレスチナ問題が存在し続けて、定期的に武力衝突が起こってパレスチナが被害者であり続けることによって、その後の援助というお金が入って来て私腹を肥やすことが出来る。

イスラエルに抑圧されて不満が臨界点を越える⇒テロを起こす⇒報復で爆撃され家族が死ぬ⇒家族を殺されたパレスチナ人が憎悪を募らせる⇒テロを起こす⇒報復で爆撃されて家族が死ぬ…

ひたすらこのデススパイラルが続く中で、復興とか援助として必ずお金が動くわけで…オレがハマースの指導者なら、その金の中から被害者に見舞金を渡して面倒見の良さをアピール。そのうえで「憎きイスラエルに家族を殺した敵を討とうぞ!」と復讐心を焚きつけて戦闘員を補充して組織を拡大。偶にロケット弾攻撃やテロを起こして「我らがハマースが一矢を報いてくれた!」と支持を獲得。穏健派より過激派の方が「やってくれた!」感が出るから支持を得やすいというのはある。

常に被害者が生まれることで憎悪が憎悪を生むこのデススパイラルが続くということは、組織としての存在意義が(パレスチナ人の中では)あり続けるし、破壊と復興が繰り返されることで金が定期的に入ってくるという錬金術でもあると。

パレスチア問題が解決しちゃったら、組織の存在意義はなくなっちゃうし、お金が入って来なくなる…かつてのPLOのアラファトしかり、ハマースのハニーヤしかり、民衆の純粋な抵抗に乗じて一部の人間が私腹を肥やせるシステムになっちゃってるのは事実だからな。

ハマースを壊滅したら? 第二のハマースが生まれるだけだろうな。

今「ハマースを壊滅させる」ってイスラエルがガザを爆撃しまくってるけど、なんとなくガザ地区そのものの抹消を目論んでそうだけど。

ガザ地区のパレスチナ人を全部エジプトに難民という形で追放してしまえば、ガザという土地も手に入るし、パレスチナ人もいなくなるし一石二鳥。

それが分かってるから、エジプトも国境を開かないんだろうけど。

一度国境を開いてパレスチナ人を難民として受け入れたら、二度とイスラエル側の国境が開かなくなってパレスチア難民は戻れない。結果、居続けられてエジプトの負担に…

色々と詰んでる。

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