差別って何だろね

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ちょっと差別についてマジメに書いてみよう。

オレの旅日記(1999年11月10日)に、マレーシアからタイへ陸路国境越えした時のことが書いてあった。

3時発タイ・ハジャイ行きのミニバスに20リンギットで乗り込む。3時間でタイとの国境に着いた。運転手がボクら外国人のパスポートを持ってイミグレーションへ行き、戻ってきた時には入国スタンプが押されていた。つまりチェックも何もなし。ボクらは車に乗って待っていればいいだけなのだ。ところが例外があって、黒人だけは自分でイミグレーションに行かないといけない。ボクらが乗った車にも1人だけ黒人が乗っていたのだが、彼だけ車を降りてチェックを受けているのを待っていた。(中略)カオサン通りの安宿だって黒人お断りになっている。

念のために言っておくけど20年前の話だ。

カオサンも表立ってお断りにしていたわけじゃなく、黒人が客としてくると部屋が空いていても「満室だから」と理由を付けて断る。一人旅のアフリカ系欧米人のバックパッカーとか、宿探しにものすごく苦労していた。

肩書のないオレの記憶は信用できない人でも、権威の前には意外と簡単にひざまずいて「へぇー、そうだったんだぁ~!」と鵜呑みにしたりするものである。

シンガポール国立大学のペギー・テオ教授が「バックパッキングのポストコロニアル分析(2004)」という論文を書いていて…その中で2000年にバンコクポスト紙に掲載されたある読者投稿が引用されていた。

犯罪の問題に対して彼(カオサン通りビジネス協会会長)は「この地域の多くのゲストハウスには『犯罪率の高い国からの旅行者は(例えいくら支払うと言っても)拒否する』という方針がある」と語っているが、これは「もしあなたの肌が黒ければ、部屋は貸さない」と言っているように聞こえる。皆さん、ウェルカム・トゥ・タイランド。

ここだけ抜き取るとちょっと意味が分かりづらいけど…要するに表向きには「犯罪率の高い国からの旅行者は宿泊拒否」というこじつけで黒人お断りにしていたと。最後の「ウェルカム~」は投稿者の皮肉だろう。まぁ、パスポートを見て「アメリカか…あの国は犯罪率が高いから泊めない」って言うわけじゃないからね。同じアメリカ人かも知れないけど、白人なら普通に泊まれて黒人は断られる。

そんな昔話なんか持ち出されても、今の話をしなければ意味がない!

そう思う方のために、2年前の2018年の記事。

AFP通信: タイの不法移民・滞在者取り締まり、ターゲットは「黒い肌」

肌の色に基づいて捜査対象を選ぶ手法をめぐり、人種差別的な色合いが見られる同作戦に対する懸念が広がっている。

「われわれの職務は、肌の黒い善良な人物と、肌の黒い罪を犯していそうな人物を見分けることだ」と、入国管理局のスラチェート・ハックパーン局長はAFPに説明した。

どうやら20年前からあまり変わっていないようだ。

タイに住んでいた頃の20代前半だったオレはひたすら色白男子を目指していた。

理由は単純明快で、色白男子がモテるからである。ビーチで遊び転げまわって真っ黒に日焼けでもしようものなら女子たちは「ดำปี๋(ダムピー)!」と言って顔をしかめる。

言語文化研究の某論文では、ダムピーの意味を「非常に黒く、美しくない様子を表す。見るに堪えない、とても満足できぬ黒さ」としていた。そもそも「見るに堪えない満足できない黒」って何?とは思うが、掃除していない埃だらけの床を裸足で歩き回ると「足の裏がダムピー(真っ黒)じゃん!」と言われたりするので、黒く汚くなったものを指したりするのかと。

日焼けすれば「汚い」と言われ、色白でいれば「綺麗」と言われていたオレだが、黒人を見かけると露骨に嫌悪感や忌避感を面に出す理由をタイ人に聞いたことがある。

「黒いから」とか「怖いから」という非常にシンプルな答えが返ってきた。

余談だが、アユタヤ王朝時代の古いことわざに「เจองูกับเจอแขกให้ตีหัวแขกก่อน(ヘビとケークに出遭ったら、まずケークの頭を叩け)」というのがある。

แขก(ケーク)は昔に中国から輸入された言葉で『お客さん』という意味だが、別の意味としてインド人を指す。ただパキスタン人、バングラデシュ人、スリランカ人など南アジアの人々も含まれることもあるし、マレー系やインドネシア人などのイスラーム教徒が含まれることもある。「狡猾で信頼できないやつら」というニュアンスを含んで使う場合は、当然ながら蔑視語になる。

เค้ก(ケーク)は洋菓子の一種で、スポンジ生地にクリームを塗り果物を載せたもの。古いことわざにも出てこないし、いくら叫んでもヘイトスピーチにはならず、ただのケーキ好き。

さて…

色々と書いたけど、普通に読めば「タイ人って黒人やインド人を差別するんだ…」という感想になるかと思うが、結局のところ差別ってそういう思考の延長線上にあるんだと思う。

「黒人って…」とか「イエローって…」という肌の色の括りから、スケールダウンさせて「タイ人って…」とか「インド人って…」という国籍の括りもあるだろし、「私は駐在員だが…あの人は現地採用」とか「私は正社員だが…あの人は派遣社員」というのもそうだろうし、人の性格を血液型で判断したがるのも、共通しているのは人を『個人』としてではなく『集団』で捉えがちというところ。

情報を受ける側もそうだけど、発する側も『集団』でまとめちゃいがちというのもある。

「タイ人は「黒いから」とか「怖いから」という理由で黒人が嫌い」というようなことを書いたが、実際にオレがそのやりとりをしたタイ人の人数は?って話になると、記憶が正しければ片手で足りるくらいの数だ。そんなサンプル数nでは誤差ありまくりの調査をもってして“タイ人の総意”のようにも受け取れる書き方をした。

以前のブログで、中国における新型コロナに関係した黒人差別のきっかけの一つになったニュースについて触れた。

3月20日に中国入りしたナイジェリア国籍の男性(47)が検疫で新型コロナの陽性反応を示したため、広州市第八人民医院に隔離。4月1日、そのナイジェリア人男性は検査を拒み隔離病棟から逃走しようとしたため、看護師の汪さんが止めようとしたところ殴られて顔面を噛まれた。

これはOkonkwonwoye Chika Patrick(47)という個人が悪い。

でも広州当局は『ナイジェリア国籍』集団に属するOkonkwonwoye Chika Patrickという捉え方をしたから、他のナイジェリア国籍者たちも通常よりも長く隔離し、逃走を防ぐためパスポートを取り上げるようになった。

さらにネット民たちは『黒人』集団に属するナイジェリア国籍のOkonkwonwoye Chika Patrickという捉え方をしたから、黒人に対する差別に繋がった。ここまで来ると個人なんかどうでもよくなってるはずだ。

ナイジェリアとアルジェリアの違いには地理というか国の知識が必要だが、肌の色の違いは色識別さえ出来れば知識がなくても分かる。

多分…情報を発信する方も受信する方も、個人単位より何かしらの集団にまとめた方が脳内で処理しやすいんだと思う。本当は1人1人違うことは頭では分かってるんだけど、個人別に脳内処理すると面倒くさいからなるべく集団で処理したい。

本来なら「ジェップとプックは黒人を嫌っている」話かも知れないが、面倒だから「タイ人は黒人を嫌っている」と『タイ人』集団にまとめて情報を発信し、受信して素直に受け止めた側は『タイ人』集団に先入観をもってしまう。そして、タイ当局は「疑わしいのは、肌の黒い人物だ」という先入観があるから『黒人』集団を見かけたら怪しむ。

ちなみに…ソイ・ナナ周辺に夜になると出没する黒人の立ちんぼ(街娼)は、ウガンダとかナイジェリアとかタンザニアとかアフリカ諸国から来ている。ロシア人やウズベキスタン人などは昔ならロイヤルガーデンホテルとかPBホテルとか置屋スタイル営業だった。スタイルの違いは縄張りの問題なのか知らんが、詳しいことは警察が知ってるはず。

所轄の警察署にみかじめ料を払ってるのか…所轄警察署も手出しできない“お上”(大物政治家とか軍高官)にみかじめ料を払ってるのか…いずれにしても本気でパクろうと思えばいくらでもパクれるはずなのに、不定期の“人種差別的取り締まり”時以外は通常に非合法営業。

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コメント

  1. sen より:

    こんにちわ
    ずいぶんむかしに ゆ さんが 日本に帰国しての総括のようなことを書かれていた文書で
    ”世界は差別と偏見で出来ている”というような一文(はるか昔なので記憶の中で変化していたらごめんなさい汗)が自分が他人との関わりや世界の出来事を捉えて考える時、結構な頻度でその言葉が頭によぎりますw

    • より:

      >senさん
      最近の新型コロナで顕在化した部分を見てると、もしかしたらアジア人差別も昔より今の方がえぐそうw
      まさに文字通りの疫病神扱いされて。