読んだ本2冊

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アルフレッド・W・クロスビー著『史上最悪のインフルエンザ ー 忘れられたパンデミック』

こんなご時世になっていなかったら興味を持つことすらなかったであろう本。

100年前のスペイン風邪について書かれた『感染症学・疫病史研究の必読書』だそうだ。

普通の疫病だと、死亡者を年齢別に棒グラフにするとU字(乳幼児と高齢者)になるが、スペイン風邪はW字(乳幼児と高齢者と、なぜか20~30代)だったらしい。

「身体的に最高の状態にあって、それまでは病気などから最もかけ離れた」年代に、非常に高い死亡率をもたらした特徴があったと。

たぶん「若者たちのからだはインフルエンザの脅威に対しあまり勢いよく反応しすぎて、その反応自体が自らを」死に追いやったんじゃないか?と。

免疫力があるだけに逆に…的な。

“たぶん”というのは、類推による説明づけであって確固たる証拠があるわけじゃないから。

我々は、1918年に何が起きたのか本当に知っているわけではなく、ゆえに楽観視できる理由は何もない。(中略)ことインフルエンザに関しては、傲慢になるより謙虚でいる方がずっと賢明である。

著者は文中に何度も書いているが「人間は昔から自分たちがほとんど罹りそうもない高い死亡率を持つ病気の方にずっと恐怖を抱く」という点に、確かに!と思った。

もし感染して発症したらほぼ100%死ぬ狂犬病とか、死亡率50%のエボラ出血熱とかには得体の知れない恐怖を抱くが、実際には我々にほとんど関係ない。

狂犬病もな…海外だと野犬が徒党を組んで追いかけてくるような地域もあって、しかも皮膚病だったりすると見た目からしていかにも「病気持ってます!」風な犬が怖すぎだったりするんだよな。

でもインフルエンザは「しょせんは風邪の重いやつでしょ?」とちょっとナメてる部分はどこかあるから、人々の注意を引かずに広がるのに都合が良い。

目を真っ赤にしてヨダレだらだらの野犬に噛まれるってなると感染の危険性どうこう以前に痛みを伴う恐怖があるけど、インフルエンザは目に見えない飛沫だから感染に際して痛みも実感もないし。

あと、新型コロナの症状も「目から血が出る」とか「口から泡を吹きながら白目になって痙攣する」とかだったらもっとビビるはずだろうしな。仮に実際の新型コロナの致死率と全く同じ、下手したら致死率が低くなるとしても、恐怖心は倍増しそう。

著者の言葉を借りるなら「全能に飽き飽きした神が作り出した、できるだけ致死的で、しかも人間にはほとんど気づかれないという矛盾を包括する病気」、それがインフルエンザ。

満足度:★★★☆☆

高木瑞穂著『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』

三重県志摩市の離島・渡鹿野島。

怪しいのが大好物なので、イメージ的に『怪しい昭和の残滓』みたいな渡鹿野島は気にはなっていた。

都市伝説化して話が盛られている部分の検証だったり、売春島になるまでの成り立ちから隆盛と衰退まで歴史的な部分だったりと、思っていたよりけっこう真面目なルポルタージュ本。

働いていた女性も、80年代までは日本人女性だったけど、それ以降はフィリピン人、次にタイ人が主流になっていったとか。

2010年に、渡鹿野島に住んでいたタイ人女性が他人名義のパスポートで入国して17年10カ月も不法滞在していたとして逮捕されているそうだ。

仮に20才で来ていたとしても、37才…

2010年時点で17年10カ月の不法滞在ということは…1992年に入国したってことか?

当時はIC旅券なんて存在していないし、顔写真も今みたいにパスポートに転写されてるわけじゃなく、パスポートに写真を特殊シールを貼り付けてただけだから、他人のパスポートの写真を貼り替えて…とか出来たからな。

むか~し(1998~1999年あたり)にバンコクで日本のテレビ局にインタビューを受けたことがある。

確か、当時は日本の偽造パスポートが問題になっていて「偽造パスポートについてなんか情報ありませんか?」と聞かれて、「通ってるムエタイジムに裏で『あいつはヤクザだ』って言われてる怪しい日本人のおっさんがいて、そのおっさんに聞いた話なら知ってる」って答えたら、「ビール1本奢るから!顔にはモザイクかけるから!」って言われて受けちゃった。

よく考えたら未成年なんだけど、たったビール1本の安上がりな報酬(数十円相当)でインタビューを受けたら、日本で普通にモザイクも無く放送されてたっていう(笑)

うろ覚えだが…その怪しいおっさんに「パスポートを売らないか?」って言われたんだよな。確か3万~5万円で買い取るから、売った後に「紛失した」って日本大使館で再発行してもらえば「君は何も困らない上にお金を手に入れられる!」的なこと言われて。

で、買い取ったパスポートは職人が写真を貼り替えて別人の日本入国のために使うと。

特に迷いもせず売らなかったけど、当時はお金が無くなったら自分のパスポートを『売る』という最終手段が存在していたことは事実。需要は間違いなくあった。

欠点は、別人の見た目があまりにも日本人っぽくなかったら簡単に怪しまれるところ。

そういう場合のために、偽装カップル(夫婦)を装った運び屋の日本人男性が一緒に入国してイミグレ対応をするとか…

他には、1人がイミグレで審査を受けている間におとりになって、その間に後ろにいた密入国者たちがほふく前進でイミグレを強行突破する手も使ってたらしい。

強行突破でイミグレさえ抜けちゃえば、あとは稼げるだけ稼いで、帰りたくなったら出頭して強制送還で正々堂々と帰国するって…経験者(タイ人の女)がむかし言ってた。

これはイミグレの係官が下を見えるように鏡を付けたりとかほふく前進対策が進んだことで消えて行った技。

あれ?渡鹿野島と全然関係なくなっちゃった。

満足度:★★★☆☆
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