こんなニュースがYahoo!ニュースにも取り上げられてた。
トロフィーハンターがまた炎上─キリンの心臓片手に「最高なバレンタイン!」
要約すると、南アフリカの32才の女性が「素敵なバレンタインのプレゼントで最高の気分!」とキリンの心臓を片手にポーズをとってる写真をSNSにアップして大炎上という話。
案の定、Yahoo!ニュースのコメントも否定的なもののオンパレードだ。
まぁ、当然といえば当然か。
上位のコメントしか読んでいないが…
『野生の動物には、自然の摂理で弱肉強食の世界が形成されている 弱いものはその中で淘汰される』
『人間って本当に勝手な生き物。なぜ人間が生態系をコントロールしようとしてるんだろう』
こんな感じで“野生”、“自然の摂理”、“生態系”の観点から彼女の行為(トロフィーハンティング)を非難するコメントも多い。
…ふむ。
調べたところ、どうやら彼女がトロフィーハンティングをしたのは、カジノの街サンシティに隣接(というかほぼ一体化)するピーランスバーグ国立公園のようだ。
プレトリアから170kmくらいしか離れていないので、ナイロビ国立公園みたいな郊外型国立公園だ。ちなみにオレはサンシティでギャンブルはしたが、動物は見飽きていたのでピーランスバーグ国立公園には行っていない。
このピーランスバーグ、南アフリカのジェネシス(創世記)作戦で1979年に出来た国立公園だ。
ジェネシス作戦とは、人間(入植者)の痕跡を取り除き、観光インフラを開発し、6000頭の動物たちを他から連れてきて(いわゆる再導入して)国立公園を作ること。
ライオンはナミビアのエトーシャ国立公園から再導入されている。
ちなみに、巨大カジノシティであるサンシティも1979年のオープン。
偶々同年オープンなの? うがった見方をすればカジノ、高級ホテル、ゴルフコース、砂浜まである巨大プールなど一大娯楽シティ建設の一環として周囲にサファリも楽しめる国立公園を作ったというのが本当のところのような気がする。
“野生”ね…
“自然の摂理”ね…
“生態系”ね…
Yahoo!ニュースのコメントに違和感を抱くのはこういうところだ。
そもそもピーランスバーグ自体が人間が介入しまくって造られた『場』でしかない。
誕生時だけの話ではない。2017年にピーランスバーグのチーターに関するこんな記事が出ていた。
Pilanesberg National Park Cheetah Conservation
オスのチーター3兄弟が同公園内で台頭して、自分たちの父親を殺して問題になったと。さらなるチーター同士の戦いや近親交配を防ぐため、3兄弟を捕まえてマラケレ国立公園とディノケンゲームリザーブに引っ越しさせたという記事。
ピーランスバーグの面積的に、生態系を維持できるチーターの最大個体数は15頭まで。その最大個体数の範囲内でバランス(パワーバランスとか遺伝子)を保つために引っ越しもさせるよ!と。南アフリカのチーターは増えたから、今後は外国であるマラウィやザンビアの国立公園に引っ越しさせるよ!と。
“自然の摂理”ね…
オレの個人的な意見だが、アフリカという言葉から連想させる“野生”に多くの人は幻想を抱き過ぎだ。
トロフィーハンティングどうこう以前の問題で、ピーランスバーグのチーターのように人間が生態系をコントロールしまくっているのが現実じゃないかな?
ナミビアのエトーシャも恐ろしいほど広大だったし、ボツワナのセントラル・カラハリもバカみたいに広大(九州と同じ面積)だったが…でも柵でグルッと囲まれているのだ。
所詮は柵の中の“野生”。
手段としてのトロフィーハンティングの是非は大いに議論すべきところだと思うけど…
“野生”とか“自然の摂理”とか“生態系”の観点から見ると、特にピーランスバーグのように人工的に動物を再導入して作られたような場所を舞台にしたトロフィーハンティングになると論点がぶれてくる気がしなくもない。
あとYahoo!ニュースのコメントにこんなのもあった。
『ナショナルジオグラフィクによると「IUCNは7月11日、ケニアとタンザニアに分布するキリンの亜種マサイキリンを絶滅危惧種(Endangered)に指定すると発表した。主な原因は、密猟と土地利用の変化だ」。彼女は絶滅に寄与してる』
南アフリカはケニアでもないし、タンザニアでもないし、南アフリカにマサイキリンはいない。
全く違う話を持ち出しても何の意味もなさない。
単純に…キリンの心臓を持って「素敵なバレンタインのプレゼント!」と言える感性は気持ち悪い! これだけだな、オレは。
そんなオレも焼き鳥のハツは普通に食うけど。
ただ、女性から「はい、バレンタインデーの生ハツ♡」って渡されても「わぁ、素敵なバレンタインのプレゼント!」とSNSにアップしない自信があるという点では南アフリカ人女性のメレリーズよりはまともな感性をしている自負はある。