1998-2000番外編【2】

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1998-2000の日記を読み返していたら、今や懐かしい場所が度々登場する。

大同門

大学卒業後タイに移住した福田千城(ちしろ)氏が創業した焼肉チェーン店だ。

1999年頃は、99バーツ(約300円)で焼肉が食べ放題という恐ろしい価格設定であった。

金はないがお腹は満たしたい年頃だったオレは度々お世話になっていた。

きちんと焼かないと死ぬかもしれない色をしたお肉が出てきて、焼くと(着色していたであろう)赤い色素が流れ出てくるが、99バーツで食べ放題なんだから仕方ないと諦められる客が行く店。

ターゲットにしていたのは現地在住の日本人ではなくローカルで、短期間で店舗数を爆増させて事業を急拡大していった。ショッピングモール1カ所に2店舗を展開したりと、最盛期の大同門はタイ全国に85店舗を展開していたはず。

タイで5番目に大きな外食チェーン店にまで成長した大同門は、2002年にタイ証券取引所二部市場に上場している。

正直言って大同門が混んでいるところを見たことがなく、逆にいつ見てもガラガラだった記憶があるが、徐々に迷走していることが丸わかりの状態になっていった。

焼肉の次に、焼肉としゃぶしゃぶを合体させた“やきしゃぶ”なるものを売りにしていたな、そういえば。簡単に言えば、焼肉もしゃぶしゃぶも同時に楽しめるよ!と。

一度だけ食べたことがあるが、肉を焼くと流れ出た脂や色素がしゃぶしゃぶ用の出汁に入ってしまって汚くなる。これは失敗じゃね?と思った。

散々迷走した挙句、2005年には億万長者の弁護士&投資家であるウィチャイ・トーンテーン氏に買収され、さらには2011年に“すきしゃぶ”チェーンを展開するHot Pot社(現JCKホスピタリティ社)に事業買収されているが、当時の大同門グループの株主名簿をみると、妻やすこ氏と二男二女の持ち株分を合算しても福田一家の持ち株比率は2.84%で第5位株主。

今でも大同門の名前でお店はあるにはあるが、食べ放題399バーツ(約1350円)らしい。

さて、創業者の福田氏だが…

2005年に、大同門グループに粉飾決算があったとしてタイ証券取引所からタイ版FBIとも言われる法務省特別捜査局(DSI)にタイ人副社長ら2人と一緒に告発されている。ちょうどウィチャイ・トーンテーン氏に買収され、彼の長女が社長として大同門に送り込まれた頃の話だ。

2014年、福田氏が11件の罪で起訴事実を認めたため裁判所は刑を半分にして、懲役17年6カ月、罰金151万バーツ(約453万円)が確定。全面的に戦い続けて無罪を勝ち取れる可能性と、35年の懲役刑を食らう可能性を天秤にかけた結果なのだろうか。

保釈されていなければ今も塀の中にいるはずだ。

今も大同門ブランドのお店はタイ全国に20数店舗あるようなので消えたわけではないが、オレの中で大同門はタイ市場における日本食の外食チェーン展開のパイオニアと言っても良いのではないか?と思っている。

そもそも大同門は日本食なのか?という話になると、オレも首をひねるけど…とりあえず日本食にしておこう。

まず、大同門は『海外進出した日本企業』ではない。タイに渡った福田氏が現地で起業し、二部市場とはいえ、上場期間は数年だけとはいえ、“上場企業”にまで登り詰めたことは単純にすごい。

戦前にタイへ移住してきた日高家や松田家あたりとはまたちょっと違う、外国で一代で成り上がったこともそれはそれですごいことだ。すぐ落ちたけど。

大同門の創業と同時期の1990年代前半にタイに進出した日本の外食チェーンといえば吉野家と8番らーめん。

吉野家は1995年に進出してシーロム通りに一号店を出したもののわずか3年で撤退。2011年から再進出しているが、90年代はまだ早過ぎた。

当時のタイ人はあまり牛肉を食べなかったからな。

一方、日本ではほぼ北陸でしか展開していない8番らーめんだが、タイ進出は1992年で大同門が設立されたのとほぼ同時期。90年代後半から大同門が出店攻勢をかけていた頃、8番らーめんはまだ店舗数も一桁で細々とやっていた。

そういう意味では90年代後半から2000年代初頭にかけて最も成功していた日本食チェーンは大同門だった。大同門が日本食だとすればね。

2000年以降になって8番らーめんも急激に店舗数を増やしていったが、最盛期の大同門と同じ店舗数になったのは2000年代も終わりの頃。

今や8番らーめんはタイ全国に132店舗もあるようだ。

いよいよ本格的な日本食ブームがタイにも到来したか?と感じたのは2005年前後からだが、大同門のピークの時期がブームと被っていたらどうだったのかは分からん。選択肢が増えたことで消費者の舌も肥えてきて、安かろう不味かろうの大同門にどれだけ需要があったかというところ。選択肢がないから大同門が(一瞬とはいえ)急成長できたのかも知れないし。

タイで大同門を見かけるとその栄光と凋落の歴史が頭をよぎる。よぎるだけで入りはしない。

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