迷惑と自己責任

スポンサーリンク

ISILによる日本人人質事件。

今までシリア情勢なんて興味もなかった人たちを巻き込んで、文字通り『国民的関心事』になった事件。

当時は日本に住んでいなかったので知らないけど、2004年の流行語大賞で入賞をした『自己責任』という言葉が再び席巻する現場に立ち会えるとは・・・なかなか興味深い現象を観察させてもらった。

『迷惑』と『自己責任』について、個人的な意見を書いてみようかと。

(ステレオタイプな言い方をすれば)集団主義の日本で個人主義の『自己責任』が声高に叫ばれるのも不思議だが、『自己責任』が叫ばれるのが今回のようなケースに限定されていることも不思議だ。

普段は大して個人主義でもないのに、偶に中途半端に個人主義を振りかざすトリッキーさが素敵だ。

そもそも、個人の意思で危険地域に行ってISILに捕まった時点で、自己の行動が原因で起こったことだから『自己責任』の何物でもない。

そんなもの当たり前すぎて、わざわざ「自己責任だ!」と口に出すほどの次元のことではない。

結果的に湯川さんも後藤さんも殺害されてしまったけど、本人の意思は別にして『死』という結果によって『自己責任』は果たしている。

読売新聞社の全国世論調査で、政府が渡航しないように注意を呼びかけている海外の危険な地域に行って、テロや事件に巻き込まれた場合、「最終的な責任は本人にある」とする意見についてどう思うかを聞いたところ、「その通りだ」が83%に上り、「そうは思わない」の11%を大きく上回った。(読売新聞より)

当たり前体操みたいに、当たり前のことをわざわざアンケートにして発表するのはギャグなのか?

ただ、国民の『自己責任』だから国家は助けなくてもよいという主張は・・・ちょっと乱暴な気がする。

実際に助けられるかどうか?ってのは話が別だけど、国家が自国民を「助けよう」とする気持ちすら放棄しちゃったら終わりでしょ?

義務かどうか?ってとこは分からないけど、努力はする必要があるかと。

それが国家じゃね?

実のところ、海外に長く住んでいたりすると海外で何か事件に巻き込まれた時に日本大使館が助けてくれるとは最初から期待できなかったりする。

例えば・・・

警察も裁判所も腐ってるある国で、無実の罪を着せられて牢屋に入ったとする。

ちょっと調べれば無実の証明はできるから助けてもらおうと思って大使館に連絡をしたとしても・・・拷問されてないか?心配してくれるだけ。

あとは弁護士を紹介してくれるかも。

そもそも大使館員に捜査権はないから、無実の罪だと分かっていても何もできない。

勝手に捜査したら相手国に対する主権侵害になっちゃうから。

親身になってくれる大使館員だったら、相手国の法務大臣とかにコネを使って話をしてくれるかもしれないけど。

こんな感じで、政府が渡航しないように注意を呼びかけていないところで事件に巻き込まれたたとしても大して期待できないが、これはもう仕方がないこと。

日本の主権が及ばない海外で日本政府が出来ることの限界を知っているから大きな期待はしないけれども、それでも『自己責任』の一言で片づけられて知らん顔をされたら残念なことだ。

今回のISILの日本人人質事件にしたって、そもそも日本政府が取れる選択肢なんて数少ない。

軍事的オプションがあるわけでもない。

独自の情報収集能力が高いわけでもない。

2億ドルの身代金を払うわけでもない(払えないとかではなく、払うデメリットの方が大き過ぎる)。

選択肢がほぼない中で助けないといけない・・・政府としては自分たちの能力の限界を知っているだけに歯がゆかったんじゃないかと思う。

不思議なのが、政府よりも国民が『迷惑』と騒いでること。

個人レベルで考えてみたんだけど・・・

湯川さんが拉致されて、後藤さんが拉致されて、結果的に殺害されて・・・

オレ、別に何の迷惑もかかっていない。

まあ、迷惑か否かなんて主観的なものだから「迷惑だ!」と思ってるんだったら否定はしないけど。

感受性が豊かなのでしょう、オレと違って。

「血税を使って救出のために政府が動いたわけだから、間接的に迷惑がかかっている」という考えも分からなくはない。

今回は分からないけど、2004年のイラク日本人人質事件の時の経費は1800万円だったそうだ。

当時の人口は1億2千万超だったから、国民1人当たり0.15円。

人質は3人だったらしいから、人質1人当たり0.05円。

人の命が0.05円もしないんだったらもったいないのかもしれないが、ゴミみたいなやつだろうと、自分が嫌いなやつだろうと、0.15円で3人も助かるかもしれない他人の命があるなら良くない?

「人の命は地球より重い」みたいなクソみたいな偽善じみた文句を言ってたのも同じ日本人だったはずだけどな。

0.15円で血税アピールが出来るほど税の使い道に熱心な方であれば、他にもっと無駄な使われ方をしている部分にもきっと多大な怒りをもって正してくれているはずだが・・・オレはそこまで細かくチェックしていない。

2004年当時は1円も日本に税金を納めていないので、間接的にすら迷惑がかかっていないけど。

あとは、「いろんな人に迷惑をかけてけしからん!」って考え。

すごいね・・・自分は関係ないのに、他人が他人にかけた迷惑について感情を抱けるって。

『自己責任』のような個人主義的思考を持ち出してきたかと思えば、『他人に迷惑をかけるのはダメ』という集団主義的思考で攻めて来たりと忙しい。

たぶん、個人主義で『自己責任』と言ってるわけではなく、『他人に迷惑をかけるような人はどうなってもいい』という意味での『自己責任』なのだろう。

ずいぶんと怖い国だ。

まぁ、湯川さんと後藤さんがシリアの最前線に行く決断をしたことは、結果論からすれば間違いだったわけだけど・・・

4年もシリア内戦は続いていたのに今までニュースとしての価値が低かった日本で、日本人が殺害されることで急にスポットライトを浴びるとは、なんとも。

ISILの影に隠れて日本じゃほとんどニュースにもなっていないが、シーア派原理主義勢力ヒズボラとイスラエルがきな臭いことになってきてるし・・・中東が混乱の度合いを深めてるのが気になる今日この頃。

スポンサーリンク
広告(大)
広告(大)

この記事をシェアする

フォローする

関連コンテンツユニット
スポンサーリンク
広告(大)

コメント

  1. nm より:

    あなたの意見が聞きたかった!
    素晴らしいバランスでわたしも同感です。

  2. まい より:

    いつも的を得ていて読んでてスッキリです。
    確かに2人がIS支配地域に行ったのは間違いであったが、殺害された時点で自己責任を果たしてます。いつだか学生が、「日本の税金を無駄にするな」と豪語してたけど、学生さんは税金を納めて無いし君らには迷惑を被って無いと観てて思いました😅

  3. より:

    >nmさん、まいさん
    ありがとうございます。
    最近ISILとトルコの関係が怪しいと思ってまして、その件は次回にでも・・・