水を巡る争い

スポンサーリンク

最近の気になるニュース。

ある男の死

先月7月26日(木)の午前8:30、エチオピアの首都アジスアベバの中心にあるメスケル広場に停まっていたトヨタ・ランドクルーザーから頭部を撃ち抜かれた男の射殺体が発見された。

車内からはコルト社製ピストルが発見されている。

【メスケル広場】

男の名前は、セメニョー・ベケレ(57)。

彼は、完成すればアフリカ最大の水力発電用ダムになる『大エチオピア・ルネッサンス・ダム』のプロジェクト・マネージャーであり、この国家プロジェクトの顔であった。

総工費はエチオピアの国家予算に相当する40億ドル(約4400億円)、ダムの最大出力は日本最大の発電量を誇る多々良木ダムの3倍以上となる6400メガワットにもなる巨大ダム。

2011年に着工し、今年完成予定のダムだ。

エチオピアが国家の威信をかけて進めていた巨大プロジェクトの顔でもあったセメニョーは、エチオピア人にとっては『英雄』であった。

自殺の可能性はなく、なぜ他殺と断定できるのか?に関しては正直どのニュースからも答えが見つからないが、いずれにしてもセメニョーは誰かに殺されたことになっている。

彼の追悼のために多くの国民がメスケル広場に集まった様子が報道されている。

エジプトはナイルの賜物

さて、ダムの計画段階から強硬に反対していた国がある。

ナイル川の下流に位置するエジプトだ。上流でナイル川をせき止められると(今でさえ水不足なのに)将来的に深刻な水不足に陥るとされる。

2011年の革命で失脚したムバラク大統領は「ナイル川に造るダムは全て破壊する」と武力行使さえ匂わせてエチオピアのダム建設を牽制していたように、エジプト的には「大エチオピア・ルネッサンス・ダム建設は宣戦布告に等しい」という立場なのだ。

エジプトが武力行使する場合に考えられるのは、フランスから輸入したラファール戦闘機でのダム爆撃。そんなエジプトの攻撃を警戒して、エチオピアはダム周辺に地対空ミサイルを多数配備している。

アフリカは橋とか鉄道とか政府の建物とか軍事機密扱いで撮影禁止の国が多い(ウガンダなんて郵便局すらダメだった)が、旅行者がフラッと行って『大エチオピア・ルネッサンス・ダム』で写真撮影が見つかったらシャレにならないくらい面倒くさいことになる可能性大。

まぁ、そもそもダム建設現場には近づけないと思うけど。

一時期はエジプトとエチオピアの戦争になるんじゃないか?と言われていたダムを巡る危機の中、エジプトがその後の革命で混乱していた時期にエチオピアがダム建設を強行。

さらに、最初はエジプトに同調してダム建設反対だったスーダンが途中でエチオピアの味方になって賛成にまわってしまったことも大きい。

エチオピアがダムを建設することによって安価に電力を手に入れることが出来るので、自分たちにとってもメリットがあるとスーダンが考え直したのだ。

2017年、エジプトがエリトリアと協定を結んでエリトリア領ダフラク諸島で2番目に大きなノラ島に軍事拠点を開設という話が持ち上がり、スーダンがエリトリアとの国境を閉鎖して国境近くに軍を集結。国境近くに非常事態宣言を発動させている。

仮にエジプトがエリトリアに軍事基地をつくると、エチオピアを攻撃しやすくなる。

そんな中で、先月エチオピアとエリトリアの戦争終結宣言。

これ、日本と北朝鮮が国交正常化するくらいビックリなニュース!! 超絶に仲が悪いあの2カ国がまさかの国交正常化とは…裏には水問題で、エジプトとエリトリアの接近を警戒するエチオピア側の思惑もだいぶあったんじゃないか?と勝手に想像。

戦争の危機?

エジプトとエチオピアの戦争になるか?ならないか?で言ったら、戦争になる可能性は非常に低いと思う。

まず、エジプトとエチオピアは国境を接しておらず、エジプトとしてはスーダンを飛び越えないとエチオピアを攻撃できない。必然的に陸戦にはならず、攻撃機で爆撃するか?ミサイルを飛ばすか?くらいだろうな… ところがスーダンがエチオピア側に味方しているとなると、エジプトの攻撃機がエチオピアの領空に辿り着く前にスーダン領空で撃墜されるリスクもある。

それに、エジプトもエチオピアも金がない。軍事力ではエジプト軍の方が圧倒していると思うけど、戦争を遂行するだけの戦費は拠出できないんじゃないか?と。

多分、両国とも戦争になったら破綻すると思う。

一応、エジプトのシシ現大統領も「戦争しない」とは公言している。

その代わりなのか?

実は、今年5月にエチオピア最大のセメント会社であるダンコテ・セメント社のトップが、他の2人と共に殺害される事件が起きている。

この会社は、大エチオピア・ルネッサンス・ダム用コンクリートの最大の供給源だ。

犯人は捕まっておらず、動機などは一切不明とされている。

そして7月のダムプロジェクト・マネージャーの死。

偶然なのか?ダムに関係している人物が連続で殺害されている。

ダムを取り巻く環境で言えば「裏でエジプトの諜報機関が関与しているのでは?」と疑われても仕方がない状況かと。正規戦は起こせないけど、暗殺という非正規戦でダム建設の邪魔をしている的な?

実際問題としては、セメント会社のトップやプロジェクト・マネージャーを殺害してもダムは予定通り完成するわけであまり意味があるとは思えないんだけど…

エジプトはダムが完成した場合でも7~10年かけてゆっくり貯水するように交渉しているものの、エチオピアは3年で一気に満水にすると主張。短期間でダムを満水にする=ナイル川(正確には青ナイル川)の水量が一気に減るわけで、エジプトは非常に困る。

もしかしたらエジプトが今後の交渉を有利に運ぶために関係者を暗殺しているのかな?

しばらくはエジプトとエチオピアの間がきな臭いぞ。

スポンサーリンク
広告(大)
広告(大)

この記事をシェアする

フォローする

関連コンテンツユニット
スポンサーリンク
広告(大)