映画『闇の子供たち』

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「こういうのがあるよ」って教えてもらった邦画『闇の子供たち』(2008)を観た。

タイを舞台にした幼児売買春・人身売買・臓器売買を描いた同名の小説が原作らしいが、原作は読んだことがない。

あらすじ

舞台はタイ。ヤイルーンは8歳のときに実の親に売られて、タイ北部の貧しい山岳地帯の村からバンコクに連れて行かれた。両親は娘を売った金で冷蔵庫とテレビを手に入れる。ヤイルーンは日本や欧米などの世界中の富裕層が集まる売春宿に連れて行かれ、大人たちの性的玩具にされていた。1年後、エイズを発症したヤイルーンは商品としての価値をなくし食事も与えられず、ゴミ袋に入れられ、処理場に捨てられた。そして、ヤイルーンが売られたその2年後、今度は8歳になった妹のセンラーが売春宿に売られていった。タイに駐留していた日本の新聞記者、南部浩行らが事件を追う。(出典:Wikipedia

タイを舞台にした幼児売買春・人身売買・臓器売買という重い題材の映画にもかかわらず、出演しているのは江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市、鈴木砂羽と、なんとも豪華な俳優陣。

邦画のくせに、冒頭から江口洋介も宮崎あおいもタイ語を話していて「え?この映画って全編タイ語で押し通す気?」と心配になったほどで、ある意味で異色の映画かも。

実際に江口洋介と宮崎あおいのタイ語の発音が通じるのか?はさておき、あんな長台詞をタイ語でよく頑張ったなと単純に感心した。

いわゆる“社会派”と呼ばれるような問題提起型の映画の場合…

「そろそろ人身売買について扱った映画が観たいなぁ~」

なんて理由で映画を選んでる奴はほぼいないわけで、別角度からの“話題性”って大事だと思うんだけど、これだけ豪華俳優陣が出ていれば自分の好きな俳優目当てで観たという人も実際にいただろうから、そういう意味では成功している映画じゃないかと。

無名俳優が出てる、外国を舞台にした、外国語がたくさん出てくる、やたらと重い題材の映画…誰が観んの? 商業ベースでそれなりに成功を収めないと広く世に問題提起できないわけで、誰も観ない社会派映画なんて意味ないからな。

感想

映画の中で少女役としてヤイルーン、センラー、アランヤーって3人出てくるんだけど、誰が誰だか分かりづらい。

ストーリーの軸が、ヤイルーン&センラー姉妹の幼児売春・臓器移植編とアランヤーの幼児売春編の二つあるんだけど、宮崎あおいがどっちにも絡んでくるし、どっちもエイズになって捨てられるところまで一緒だからややこしい。

二本軸でいくのなら、どちらかをもう少し違う設定にして欲しかった。

この映画、公開直後はフィクションかノンフィクションかで騒いだっぽい。

「少女から生きたまま心臓移植」 映画「闇の子供たち」の問題PR

まぁ、そもそも『映画』っていう時点で作られたものなわけで…

例えばルワンダ大虐殺を描いた映画『ホテル・ルワンダ』(2004)だって、あれは実話を基にした物語であって、映画である以上は脚色・演出されている。

「じゃあ、物語なんだからルワンダ大虐殺もなかった」という話が飛躍し過ぎなのと同様に、『闇の子供たち』も完全フィクションの世界なのか?と言えば違うと思う。

色々なタイの社会問題を合体させて、観客によりインパクトを与えられるような描写にした感じっていうのかな?

「エイズになった子供をゴミとして捨てる」とか、もしかしたら本当にあったのかもしれないけど、ロッブリー県にあるエイズ寺からヒントを得た設定なのかな?と思った。エイズを発症した人がよくこの寺の前に捨てていかれるようになって、そんな人たちを受け入れて看病しながら最期まで見届けてくれる通称エイズ寺は実在する。

『闇の子供たち』も、幼児売買春・人身売買・臓器売買という事実を基にした物語かと。

先に“物語”としての演出である部分を言うなら…

映画の冒頭で、人身売買組織の一員であるタイ人の男が少女を買い付けている場面があった。

Wikipediaのあらすじには「タイ北部の貧しい山岳地帯の村からバンコクに連れて行かれた」と書かれているが、映画内で男が運転していた車のナンバープレートはビルマ文字で書かれていていることから、実際にはタイではなく国境を越えたミャンマーの山岳民族の家族から子供を買い付けた設定になっていることが分かる。実際に国境の場面もあったし。

その少女の姉であるヤイルーンが、バンコクの置屋で売春をさせられた挙句にエイズを発症してゴミとして捨てられるのだが、実家に這って帰ってくるシーンはいくら演出にしても現実離れし過ぎていて、へ?!ってなった。

当然、姉妹だったら実家は同じである。ということは、ミャンマーの山岳地帯。

バンコクで捨てられた少女が少なくとも800キロもタイ国内を移動して、パスポートなんか当然持っていないだろうから国境も合法的に越えられるわけもなく、山岳地帯の国境警備の手薄な場所を探して越境して、ミャンマーの村まで帰ってきたの?

バンコクからミャンマーの山岳地帯まで這って帰ろうとしたら、アユタヤに辿り着く前にお腹が摩擦で破けて内臓が出ちゃうだろ!!

演出の意図は理解できるんだけど、あまりに不自然な設定にされると引っ掛かっちゃって…いまいち。

ただ、こういう突拍子もない演出部分を根拠に幼児売買春・人身売買・臓器売買まで“ない”ことにならない。

最近のニュースを読めば簡単に分かる。

人身売買

2015年4月:タイ南部、マレーシアとの国境近くの山中で数千人のロヒンギャが収容されていたとみられる人身売買キャンプ跡が70カ所発見された。さらに、収容中に虐待や病気で死んだロヒンギャたちの墓穴が多数発見され、国境を越えたマレーシア側と合わせて数百人の遺体が埋められていたようだ。

この人身売買に関与していたとして逮捕・起訴されたのは、タイ国軍の高官や、キャンプ跡が見つかった地域の市長や議員ら政治家や、警察など103人。被告の中で最高位は陸軍中将。

2015年9月:この人身売買&大量殺人事件の捜査を指揮していたパウィーン警察少将は捜査の継続を進言するも、軍事政権が打ち切りを決定。さらに、なぜかパウィーン警察少将は事件現場となった地域への異動を命令される。現場になった土地に赴任すれば捜査への恨みから殺されると、パウィーン警察少将はオーストラリアへ政治亡命。

2017年7月:裁判で被告62人に有罪判決が下り、マナス陸軍中将は懲役27年。

割と最近の話である。

人身売買キャンプに収容されたロヒンギャたちを、「金を払わなかったら首を掻き切る」とミャンマーに残っている家族を脅して10万バーツ(約34万円)の身代金を要求したうえで、マレーシアに奴隷として売り飛ばしていたようだ。

軍の超大物高官や地元行政のトップまでこの人身売買ネットワークに関与していた上に、軍事政権はさっさと事件の幕引きを図ったわけで…具体的なことを言わなくてもどういうことか分かるでしょう。

大体、タイで本格的に悪いことをしようと思ったらバックに軍か警察を付けておかないとムリなわけで。逆の言い方をすれば、本気でヤベえ奴の裏には必ず軍や警察の大物がいると。

ちなみに、タイ在住(だった)あるあるを言うと…

「オレ、警察や軍にコネあるから」って調子こいてる奴ほど大したことない。

でも、タイ在住日本人にもこういう奴がいる。

乞食ビジネス

そういえば、タイに住んでいた頃に乞食ビジネスが社会問題になったことがある。

よく歩道橋の上とかでコップを持って小銭をせがんでくる乞食がいたが、実はプロ乞食も多いっていうのでタイのテレビ局が隠し撮りで調査して話題になった。

意外とタクシー通勤してた!という事実が判明したりして。

プロ乞食的には、大人の単独乞食よりも子供がいた方が可哀想度もアップして同情を集めれるっていうんで、親子を演出するためのレンタル子供もあるみたいで。

っていうか、そもそも裏に乞食ビジネスを展開している組織があるようだし。

レンタルの子供も、障害がある方がもっと可哀想度もアップして同情を集めれるっていうんで、手や足を切り落としてる場合もあるとか。

そういうレンタル子供が、そもそもタイ人ではなくてミャンマー人とかカンボジア人だったりするんだけど、どうやってバンコクまで流れてくるんでしょうね?

…人身売買とか?

幼児売春

今年8月のニュース。

ทลายแก๊งค้ากามเด็กชาย ผ่านไลน์ พบอาจารย์-ขรก. เคยใช้บริการ

『รักเด็ก(子供好き)』という人身売買グループが摘発された。

ちなみにタイ語にはชอบ(Like)とรัก(Love)があるけど、『子供好き』グループはรัก(Love)の方を使ってる。普通、健全な子供好きはชอบ(Like)を使う。

このグループは、12~16才の男児7人に売春をさせていた。

『子供好き』のLINEグループには166人のメンバーがいたが、警察は実際に買春を確認できた8人を起訴。その内の1人は定年退職者で、1人はイケメンだった…と。

イケメン情報って必要?

こういう類いのニュースは、未だにいくらでもある。

映画に対して「(幼児買春が)事実だと日本人への誤解を生む」と反発が出ていたらしいが…プププって感じ。

誤解だと思っている人に…ほらっ、取れたてホヤホヤのニュース!!

จับเฒ่าญี่ปุ่นชำเราเด็กหญิงวัย 13 บนคอนโดฯ พัทยา ขยายผลรวบแม่เล้าวัย 20 ส่งเหยื่อบำเรอกาม

今月1日だから、わずか2週間前のお話。

パタヤで、日本人ナガシマ・ヒロユキ(71才)が13才の少女を買春して捕まってるぞ。

ナガシマの部屋からは、大量のローションや盗撮用の隠しカメラも発見されてる。

ちなみに、ナガシマはパタヤで「のび太」と名乗っていたらしいww

この自称のび太君に少女をたったの1000バーツ(約3400円)で斡旋した20才のタイ人女は、貰ったお金でご飯を食べに行って逮捕。

どうやら女も斡旋を生業にしているわけではないようで、ジジイのび太に「知り合いに幼い子いたら紹介してくれよ」と頼まれて、食べたかった豚肉料理の飯代だけで知り合いの少女を紹介したっぽいな。

臓器移植

映画内での設定である「少女から生きたまま心臓の移植」って、そもそも「生きたまま」である医学的必要性がちょっとよく分からないんだけど…「少女を殺して心臓を移植」よりも残虐度は高い気がするから、そういう設定にしたのかな?

正直、臓器移植に関してはノーアイデア。

まぁ…タイのことだから臓器売買ブローカーとかはいそうだけど。

ちなみに2年前くらいから海外のネット界隈で「臓器移植のために殺害されたタイ人の子供700人の遺体がマレーシアとの国境近くで発見された」って写真付きで出回ってるけど、あれはシリアで化学兵器の犠牲になった子供たちの写真を使ったフェイクニュース。

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コメント

  1. ゆな より:

    早速記事にしてくださってありがとうございます!
    確かに、分かりづらい部分が多いですよね、この映画。少女の話にしてもそうだし、意図不明な演出とかもちらほら目についてイマイチ話に集中できなかったり、残念に感じた部分はありました。江口洋介演じる記者の過去と本筋との絡みも何か伝わりにくかったですし…
    重い主題の話なので、面白くしろとは言わないけど、もうちょっと映画として見せる努力はできたんじゃないかな?と。
    原作がある映画はどうしてもダイジェスト版的に作るしかないんでしょうし、仕方ないのかなとは思うんですけどね。
    ネットでちらっと見たところ、この作品は絶対原作で読むべきだ、と書いておられる方がいたので私は近々原作も読んでみようと思っています。