またもや『秘境』になったカーボ・デルガド州

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いつもマニアックなネタなので、今回はメジャーな話題を。

モザンビーク最北部のカーボ・デルガド州が地味に“秘境”化してる話題。

2017年10月からアンサール・アル・スンナを名乗る地元のイスラーム原理主義武装勢力が暴れまくっているんだけど、どんどん激化していて今はかなり危険な状態。

ちなみに同じ名前のグループがイラクにいて、そちらの方が有名だが、名前が被っているだけで実は全然関係ない。地元民たちは彼らのことをアル・シャバーブと呼んでいるが、ソマリアの有名なアル・シャバーブとも関係ない。

元々は国際的なグループとは繋がりがなかったんだけど、今はイスラーム国(ISIL)系になったという話もある。

国連人権高等弁務官ミシェル・バチェレによれば現地は「絶望的」な状況で、35万人の難民に対応できるように資金援助が必要としている。今月に入ってから既にいくつもの村が襲撃され、何十人もの村人が斬首されている模様。

これまでに殺害されたのは2300人以上、30万人の難民が発生した。

思えば、オレが最初にモザンビーク入りしたのも最北部だった。

色が付いているのがカーボ・デルガド州である。ちょうど北海道くらいの広さの州だ。

マラウィのチポンデから国境を越えて、モザンビークのニアサ州に入り…

ニアサ州からカーボ・デルガド州まで横断した後は、南下して3,300キロ走りスワジランドに出国。

モザンビークで行っていないのはテテ州とマニッカ州だけ。

あくまでオレの昔のイメージだけで話をすると…

ニアサ州とカーボ・デルガド州は交通インフラが激ボロで、そもそも行くのが難しい場所。行けないことはないけど、とてつもなくハードな旅を覚悟しないといけない。

マジで陸の孤島だった。

懐かしい写真で振り返ってみよう。

ニアサ州を横断してる途中の風景。標高は高いもののけっこう平坦な感じで「大したことなさそう!」と、まだ余裕があった頃。

焼け落ちた村をサルが占領しているのを眺めた辺りも、まだ余裕。

謎の巨岩山が現れるようになった辺りから「あれ?」と。

どんどん道が酷くなっていき…

ついに車が通るための道ではなくなり、もう引き返すことも出来なくなって、泣きそうになりながら前進。

橋を越え…

段差を乗り越えて、心とサスペンションをへし折られてようやく辿り着いた美しいインド洋の町ペンバ!!

ペンバからもう少し北上すれば、隣国タンザニアに抜けられるので行くか?かなり迷ったが、道が極悪だと聞いて止めた。

今までが散々極悪だっただけに、もうこれ以上悪路が続くのはムリ!ってなって。

北上を諦めて南下したが(結局南下しても悪路だったけど)、アンサール・アル・スンナが暴れているのは、オレが行くことを諦めたペンバより北の“僻地”の話。

言ってみれば、モザンビークの中でも極北(Far North)の話。

車のオレは行っていないが、Fさんはチャリであそこら辺を行ってたはず。当時は地雷が(ちょっと)心配なくらいで、イスラーム原理主義勢力とか全然いなかったけど、とにかく悪路で有名でみんな敬遠するような場所。

いずれにしても、ペンバより北はタンザニア国境までアンサール・アル・スンナが出没する地域で、混乱に乗じてイスラーム原理主義勢力と関係のない盗賊団も出没するという話。

2018年6月には、ペンバから直線距離でわずか60kmしか離れていない北のキサンガでアンサール・アル・スンナの襲撃があったようなので、実質ペンバより北は行けないかと。

先週にはアンサール・アル・スンナが「ムウェダを攻略する」と宣言して近隣の村を占領しているようで、交通の要衝ムウェダを抑えられたらペンバから北のタンザニアまでのルートは絶望的だ。海上ルートも、インド洋沿いのキリンバス諸島のいくつかの島は奴らに占領されているらしいので不可。

キリンバス諸島とかめちゃくちゃ綺麗らしく、Quirimbas Islandsで画像検索すると行きたくなるが、今は行ったら首狩られる…

さて、モザンビーク政府は軍による掃討戦を展開しているが、外国勢力の姿もチラホラ。

2019年10月、ロシアの民間軍事会社ワグナー・グループが200人の傭兵とMi-17ヘリコプターでカーボ・デルガド州に乗り込んできた。

意気揚々とやって来たけど、不慣れなジャングルでのゲリラ戦でアンサール・アル・スンナの攻撃に遭い、来て早々に7名が戦死。その内4人は斬首されている。

結局、ナンプーラ州のナカラまで退却している。だいぶ遠くまで逃げたもんだ。

代わって、今年4月からモザンビーク政府が契約を結んだ民間軍事会社がダイク・アドバイザリー・グループ(DAG)

ジンバブエの退役軍人であるライオネル・ダイクが設立した民間軍事会社で、ダイクという名前からしてアフリカーナー系と思われるが、白人だ。

白人政権下のローデシア軍ではローデシアン・アフリカン・ライフルズ(RAR)の少佐で、国名がジンバブエになってからはジンバブエ軍のパラシュート部隊の指揮官も務めて、大佐で退役した軍人。

ダイクは退役後に、地雷除去や爆発物処理に特化したマイン・テック・インターナショナルという民間軍事会社を設立。ボスニア、コソボ、ソマリランド、イラク、レバノンなどで地雷除去プロジェクトを受注し、その分野では世界屈指の民間軍事会社に。

そんな彼が設立した別会社がダイク・アドバイザリー・グループ。

かつてジンバブエ・アフリカ民族解放軍(ZANLA)がモザンビーク領内に基地を置いて、アパルトヘイトをしている白人のローデシア政権と戦っていた過去を考えると…

かつて黒人ゲリラを掃討していたローデシア軍人に助太刀を依頼するとは、ね。

DAGだが、最初の出撃でヘリコプターを撃墜され、その後も別な航空戦力を撃墜されたりとだいぶ苦戦している様子。

マコミア奪還作戦では、DAGのヘリコプターが(ゲリラか民間人か問わず)“動くもの全て無差別掃射”していたという情報もあったりするが…

モザンビーク政府はDAGとの契約を延長したそうだ。

契約延長には引き続いての航空支援に加えて、モザンビーク軍への訓練も含まれている模様。

ローデシア軍が開発した対ゲリラ戦術『ファイヤー・フォース』を、旧ローデシア軍人だったダイクがモザンビーク軍に訓練すると。

かつて、モザンビーク領内にあった反政府ゲリラの基地を200人のローデシア軍が『ファイヤー・フォース』戦術で急襲。1人の犠牲を出したものの、この攻撃で反政府ゲリラ3000人を殺害したディンゴ作戦に習ってイスラーム原理主義勢力を包囲殲滅させるつもりのようだ。

なお、南アフリカ政府はノーコメントを貫いているが、どうやら南アフリカ軍の特殊部隊もカーボ・デルガド州で何かしらの活動をしている模様。

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