タイの歴史学者・言語学者・思想家にして詩人、チット・プーミサック。
王政や政府を批判し続け、35才で殺害されるまで何度も投獄・拷問された伝説の詩人。
大学の卒業式で国王から渡される卒業証書をタイ史上初めて拒否した男。
彼の著書はタイで長らく発禁(未だに発禁の本もある)処分されていた。
そんな彼の代表作「คาวกลางคืน(夜の臭気)」
ああ……夜の臭気 魚の腐臭消すほどにたちこめる
人食う臭気 バンコクにただよう
夜の種族が出す セックスの臭い
若者がこれ嗅いで 白中夢に酔う
女の臭いに身ふるわせ 性欲の虜となる
大口開ければ 性に飢えた悪臭放ち
口に出す言の葉 みな性の話まき散らし
もの書けば 廓通いの話ばかり
ああ、タイは堕落する 爛熟したローマのように
色に迷い 民族滅す
火炎逆巻くごとく 淫蕩ローマを呑み尽くす
一〇〇〇年の歳月経た後も この恥さらになくならず
ああタイ……善輝く 黄金の国
邪悪な性の臭気 闇はたまた黄金をいや増す
タイ語の原作はキレイな韻を踏んでて、内容の強烈さもさることながら彼の最高傑作のひとつと言われるのも分かる。
チット・プーミサックがこの詩を書いた頃のバンコクって、ベトナム戦争でアメリカ兵がR&R(慰労休養)目的で大挙して押し寄せた頃。
ピーク時には年間7万人のアメリカ兵がセックス目的でバンコクを訪れたとか。
ペッチャブリー(ペッブリー)通りに今もソープが沢山あるのは、ベトナム戦争の名残っぽい。
かつてはソープ以外にもアメリカ兵向けのバーやクラブが通りにずっと軒を連ねていたみたい。
ナナやグレイス、プリンスと言った、未だに名前を聞いただけで怪しげなイメージを抱くホテルたちもベトナム戦争のアメリカ兵相手にオープンしたホテルらしい。
当時は、1泊5ドル、24時間ルームサービス、無料マリファナ、スイミングプールが共通サービスで、20軒以上のホテルが乱立したとか。
当時は夜の臭気がプンプンしてたんだろな。