最新DRC情勢(2025/5/2)

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GWにぴったりの最新コンゴ民主共和国(DRC)情勢。

4月23日、カタールが仲介する和平交渉がドーハで行われてDRCとM23が合意。

その2日後の25日、ワシントンDCでアメリカとDRC、ルワンダの3カ国で共同宣言。

共同宣言の内容は米国務省が公表している。

5月2日までにDRCとルワンダの間で和平協定の草案をつくる予定になっているが、現時点ではまだ草案は公表されていない。

もともとDRC政府は“テロ組織”のM23とは直接交渉なんかしない!軍事的に決着をつける!と意地を張っていたのだが、そうも言っていられないくらいM23に要衝を次々と制圧され、軍事力では“テロ組織”ごときのM23にすら到底敵わない虚弱コンゴ国軍であることが露呈。

隣国アンゴラの仲介で「やっぱM23と直接交渉する」と方針転換したものの、今度はM23が急に和平交渉を拒否して離脱。

その理由というのが、交渉が始まる直前に欧米がルワンダに制裁をくわえたから、それに反発して。

まぁー不思議!!

M23の背後にルワンダがいることを絶対に認めないのに、ルワンダが制裁されたからってM23が反発するって…謎すぎ!! 関係ないのなら、なんで反発するんでしょ?

こうしてアンゴラ仲介の和平交渉は暗礁に乗り上げたのだが、そこからサプライズでカタール仲介の和平合意。

そのわずか2日後には、アメリカがDRCとルワンダの外相をワシントンに呼びつけて共同宣言。

これ、「カタール仲介の和平交渉」と「アメリカ主導の共同宣言」は別々じゃなくて、アメリカからの依頼を受けたカタールが取り急ぎ和平交渉をまとめたような気がする。

2月にDRCのチセケディ大統領がトランプに手紙を送り、コバルト、銅、リチウムへのアクセスを見返りにするからM23から助けてくれ!と(トランプが大好きな)ディールを持ちかけていたようで…

それに沿った動きっぽい。

さて、アメリカ側でこの問題に当たっているがマサド・ボウロス大統領上級顧問。

By Gage Skidmore, CC BY-SA 3.0, Link

アラブ・中東担当とアフリカ担当を兼任している。

トランプの次女ティファニー・トランプと結婚したマイケル・ボウロスのお父さんで、レバノン人の億万長者。

思いっきり縁故採用。

民族的にはレバノン人だが、ナイジェリアを拠点に西アフリカで長年ビジネスをしてきた人。

妻サラも西アフリカのブルキナファソ生まれのレバノン人で、トーゴやガーナなどアフリカ10カ国に展開するファドゥル・グループ創業者の娘だ。

ファドゥル・グループは、建設、電気(発電・送電)、印刷、メディア(テレビ局)の他、バイク・自動車販売としてホンダ(バイク)、三菱、日産、メルセデスベンツ、ルノー、現代の代理店をやってる。

西アフリカでビジネスを成功させて億万長者になったマサド・ボウロス、妻に選んだのは同じく西アフリカでビジネスを成功させたレバノン人億万長者の娘。

当然その子供たちもアフリカとは縁が深く、トランプの次女と結婚したマイケル・ボウロスの兄ファレス・ボウロス(次女からしたら義兄)は、ナイジェリアの首都ラゴスを拠点にアフロビートとヨルバ・ヒップホップをミックスさせたアーティスト活動をしている。

Oyibo Rebel – OJU MI BLOODY ft. Chinko Ekun, Mz Kiss

これがトランプの娘婿のお兄ちゃんがナイジェリア人ラッパーのチンコ・エクン(すごい名前だ)とMz Kissと出した曲。

歌詞がヨルバ語(ナイジェリアの三大言語のひとつ)なんだよな。

要するに、ボウロス家はアフリカとの関係がかなり深い。

そしてマサド・ボウロス大統領上級顧問はアフリカでのビジネスに興味津々である。

なにしろ自分もナイジェリアを拠点にビジネスを展開しているし、義父(ファドゥル・グループ創業者)は西アフリカを中心に港湾や道路建設も手掛けるなど手広くビジネスをやってるから。

DRCとM23(実質的にはルワンダ)との間で和平を成立させたら、アメリカはDRCとルワンダとそれぞれ二国間鉱物取引協定を結び、数十億ドル規模の投資をする予定らしい。

オレがマサド・ボウロス大統領上級顧問なら…お義父さんにも連絡して、自分たちもどうやって利権に絡むか考えるな!

インサイダー取引。

さて、アメリカがDRCの問題に介入してきたら先行きは明るいか?と言えば…

個人的には、利権に絡むプレイヤーが増えれば増えるほど複雑化して面倒になるニオイがプンプンする。

ルワンダはM23という代理組織を使ってDRC国内で利権に絡んでいるが、いざとなったらM23を切り捨てて別な代理組織を作ればいいだけの話。

ウガンダも、CRPやCNLCという代理組織を使ってDRC国内で利権に絡んでいる。どちらも戦争犯罪人が作った武装勢力だが、裏にウガンダがいる。

そしてルワンダとウガンダは、フレネミー(frenemy=friend+enemy=友だちを装った敵)だから、仲が良さそうにみえるのはDRC国内の利権を上手く棲み分けしてるだけの話。

あと、あまり目立たないが周辺国ブルンジも利権絡みプレイヤーのひとつ。

もしアメリカが乗り込んできたら中国と競合することにもなる。

DRCはアメリカに安全保障(軍事支援)と引き換えに地下鉱物へのアクセス権を与える取引をしようとしているが…

2007年に中国とも同じような取引をしている。

DRC国内のインフラ整備を中国がする見返りに銅とコバルトへのアクセス権を与える取引。

この20年で外国資本としては中国がDRCの地下鉱物へのアクセス権を圧倒的に支配しているけど、そこにアメリカが乗り込んできたら…

DRCの地下鉱物を巡るアメリカと中国のグレートゲームがはじまるかもしれん。

ちなみに…中国の国営企業がDRCで鉱山経営に絡む、公的というか表というか合法な絡み方もあるけど、中国の民間企業が闇というか非合法な絡み方をしているニュースもちらほら見かける。

例えば、最近でいえば2025年1月4日に南キヴ州で3人の中国人が捕まっている。

Congo jails three Chinese citizens in illegal mining crackdown | REUTERS

逮捕時に金の延べ棒12本と現金40万ドルを持っていて、鉱物の違法取引容疑。

なにがすごいって…

逮捕されたのは1月4日だけど、この中国人たちは2024年12月頃から南キヴ州をウロウロしてたみたい。

その時期に南キヴ州に行く、しかも金の延べ棒と多額の現金を持って、というのがオレには信じられん。

平時でさえ南キヴ州に行くのはちょっと怖いのに、M23が攻勢を強めてあの辺一帯が緊迫していた当時の状況下でよく金の延べ棒と現金40万ドル持って行けたもんだ。

もうひとつが、1月4日に逮捕されて裁判で判決が出たのがわずか11日後の1月15日という、DRCの裁判のスピード。

禁固7年、罰金60万ドル、服役後は国外退去からのDRC永久出禁の刑。

この捕まった3人は違法取引だけど、違法採掘もある。

2024年12月に南キヴ州で、DRC当局が金鉱山をアポなし訪問したところ中国人60人が違法採掘していて、うち17人が逮捕されている。

南キヴ州知事によれば、州内で違法採掘している中国の会社は540社あるとのこと。

このバイタリティーはある意味すごいよなぁ…今の日本人にはもうない気がする。

投げ銭Doneru

書いた人に投げ銭する

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