実はわたくし・・・
ある特定の民族集団のことを「乞食」と呼んだり、別の民族集団のことを「雑種」と呼んだりしています。
ヒンバ
ナミビアの北西部カオコランドに住むヒンバ族。
全身に赤土と乳脂肪を混ぜたペーストを塗って赤く染まる女性が有名なヒンバ。
テレビでも偶に取り上げられたりするが・・・
そもそも『ヒンバ』という民族集団は19世紀以前には存在していない。
なぜなら、彼らは元々ヘレロ族だから。
左がヘレロ、右がヒンバ
19世紀末、帝政ドイツに反旗を翻しヘレロ戦争を戦ったヘレロたち。
ドイツ軍はヘレロを絶滅させようとして、この戦争で8割のヘレロが殺されている。
離散したヘレロの内、西洋文化を取り入れたのが多数で、それが今のヘレロ。
独特な西洋風ロングドレスが特徴。
そんな中、地元に戻って周りの他の民族に「家畜ちょーだい!」と助けを求めてまわったグループもいた。
そんな彼らをオジヘレロ(ヘレロ語)で乞食を意味するヒンバと呼んだ。
さらに伝統的な牧畜生活を捨て農耕生活をはじめたグループをオジヘレロでツチブタ(食べ物を探して地面を掘るブタ)を意味するゼンバと呼んだ。
ゼンバは一度だけ会ったけど、髪飾りが独特。ヒンバみたいに体を赤く塗ったりはしていないけど。
つまり、ヘレロもヒンバもゼンバも元々はヘレロなんですね。
バスター
さて・・・
18世紀、南アフリカからナミビアに移住してきた主なグループが2つある。
17世紀にケープタウンを建設したオランダ人入植者と、先住民コイコイやインドネシア奴隷の女性との間に生まれた混血児たちのグループだ。
まずはオーラム。
インドネシア語のOrang lama(昔の人)から来ているとされる名前の民族集団だ。先住民のコイコイとの混血度合いが高かったから、先住民という意味合いでの「昔の人」なんじゃないか?という勝手な想像。
彼らはアフリカーンス語を話し、洋服を着て、馬に乗り、銃を持ったコマンドだった。
ちなみに軍の特殊部隊をコマンド部隊と呼んだりするが、コマンドは元々アフリカーンス語だ。小規模の騎兵部隊でヒット・アンド・ラン戦法を得意とする。
圧倒的な軍事力でナミビアで無双状態になり、アフリカーナー一族や、ウィットブーイ一族などナミビアの近代史にその名を残すオーラム。
最初は先住民コイコイ(ナミビアにいるのはコイコイ最大グループのナマ)と同盟を組み、そのうちナマを率いたオーラムも、今はナマとの同化が進んで母語もナマ語になってオーラムと区別せずナマとひとくくりにされている。
もうひとつのグループが、ナミビア中部レホボスに住むバスター。
彼らはオーラムと違って内向き志向で、とりあえずナミビアに住む土地が欲しかった人たち。
彼らの民族名はオランダ語のBastaardから来ており、雑種という意味だ。
オランダ人入植者と、先住民コイコイや奴隷との女性との間に生まれた混血児たちだからという理由。
色々と問題がありそうだが、そもそも彼ら自身がバスターを「誇りある民族名」として名乗っているのだから第三者がとやかく言うことではない。
民族名はただの集団名詞として気にしない場合がほとんどだけど、語源まで知ってしまうとなかなかすごかったりする。