悪いイメージの方が固定化しやすい

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帰りは京阪で京都まで行って、京都から新幹線に乗ることにした。

京都でどこに行こうか?

崇仁(すうじん)地区とか?

日本最大規模の同和地区のひとつ。

同和問題って西日本では身近かもしれないが、東日本(特に東北から北)はぜんぜん身近じゃない。被差別部落の分布ってヤマト国家の影響度というか浸透度合と重なっていて、東北以北は西日本ほど歴史の中で制度として固定化されるまでには至らなかったからかな?

東北なんて蝦夷(えみし)の地だからな!

大和朝廷に「まつろわぬ(従わない)民」がいる蝦夷を征討するための征夷大将軍だからな!

同和問題を学校で習いはするけどぜんぜん身近じゃないからピンと来ないくせに、“部落”という呼称は差別を連想させるから止めましょう!的な波にだけはちゃっかり飲み込まれた。

連想とか知らんし。

まつろわぬ民が住む蝦夷の地では、“部落”は小さい集落のことでしかなく何の含意もなかったのに、西日本などという蛮族の住む地域のせいで急にセンシティブな言葉になってしまった。

蝦夷(えみし)ですらピンと来ないんだから、時代が変わって代わりに蝦夷(えぞ)と呼ばれるようになった今の北海道ではもっとピンと来ない。

日本最大規模の同和地区・崇仁ねぇ……

なんだか似ているかも、と思った。

寿町に行った話を横浜の友だちにしたら、小さい頃から親に「あそこには近づくな」って言われてたからそもそも行ったことがないと言われた。

宝塚の友だちと大阪で会うことになったから、「今あいりん地区にいるから来いよ」と誘ったら「やばいとこだからいやだ」と返事が来た。

町名なんて、基本的にただの識別子でしかない。

なのに、イメージがついて固定化されてる。

崇仁地区と、寿町やあいりん地区は同列に扱うべきではないかもしれんが、ただの町名が強烈な含意を帯びる過程はもしかしたら似ているかも。

横浜の友だちは寿町に一度も行ったことがない。

オレはついこの前行った。行ったうえで「ジジイしかいないし、絡まれてもそこら辺に置いてある三角コーンをフルスイングすれば勝てるよ」と言っているのに、反応は芳しくなかった。

彼女は実際に行ったことはないけど、情報としてはどんな町かを知っている。

そして忌避してる。

そこが謎だ。

思うに、情報の出し方というか、情報伝達という行為そのものの構造の話かもしれん。

例えば、オレがアクセス数を稼ぎたいブロガー、再生回数を稼ぎたいYouTuberだとする。

あいりん地区を散歩した話で、注目を集めたいならこんなタイトルにするかもしれん。

「日本で最も治安の悪い街あいりん地区に潜入!!」

「別に普通でした」なんて書いても“面白くない”(=アクセス数を稼げない)。

注目されたいから“ちょっと盛る”。

人間の本能として、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に強く反応してしまうネガティビティ・バイアスのせいで、「あいりん地区はゴミひとつ落ちていない綺麗な街に生まれ変わっていた」より「街全体を不穏な空気が漂い、今にも暴動が起こりそうな気配だった」方が反応は強い。

ちなみに、どちらもウソである。全然キレイではないし、大阪の中でも“濃ゆい”街であること自体は事実だが、かと言って危険な雰囲気もない。

こうして「あいりんはやばいところ」というネガティブ情報の方が流通しやすく、情報伝達が含意を再生産して強化・固定されていくのかも。

更新されずに、ネガティブなまま固定化しやすいって言うか。

オレが「実際に行ってみたらそこまででもない」と書いても個人的体験談であり、伝播力というか拡散力は弱い。やばい街として書いた方が広がりやすい非対称性の話。

こういう情報の出し方はよく見かける。

例えば、「モヤレ+国境」でネット検索すると「世界一危険な国境モヤレへ行ってやった!」的な旅ブログや動画がたくさんある。

モヤレが“世界一危険”なわけ絶対にない!!

断言してもいい。

でも、「世界一危険」って言われるとドキドキしちゃうよね!って話で、ただ「モヤレで越境した」より「世界一危険な国境モヤレに行った」と書くほうが他人からの注目を集められる。

どうやら、ガイドブック『地球の歩き方』に「決して通ってはいけない」と書かれてて、モヤレの町自体の掲載が削除されているからってのが“世界一危険な国境”の根拠らしい。

しょーもな!

一応、AIに「過去30年の間で、ケニアのA2号線(イシオロ〜モヤレ間)で外国人旅行者が巻き込まれた事件・事故を調べて」と聞いてみたが、「国際データベースや主要ニュースソースでは確認できなかった」との返答。

そう、オレも聞いたことがない。

特定の事件記録は見当たりませんでしたが、それは「安全である」ことを意味するのではなく、「リスクが高すぎて外国人旅行者がほとんど入らない地域である」という解釈が妥当です。

それは否定しないが、「リスクに見合うだけの価値がないから行かない」だけで、「旅行者が高確率で事件・事故に巻き込まれる」わけではない。

モヤレに行くのと、ナイロビ市内を歩き回るのでは、ナイロビの方が襲われる確率は高いのに、どこが“世界一危険”なんだろ?

「モヤレは安全です」とも言い切れないが、「モヤレは世界一危険な国境の町です」というのも盛り過ぎ。

でも、そういうことを言い出すと面白くない。

“世界一危険な国境”モヤレと言っていた方が興味は引けるが、それはモヤレという町名の含意を再生産して強化・固定してゆく。

友だちに聞いたら、ここ数年で崇仁地区は再開発で大きく変わったらしい。

京都芸大のキャンパスが移転して、かつてのように隔絶された雰囲気はなくなったとか。

少し迷った挙句、崇仁地区には行かず、二条城と京都御所に行ってみた。

二条城

京都御所

投げ銭Doneru

書いた人に投げ銭する

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