大阪散歩

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前回は完全に失敗だったのに、懲りずに再びのお散歩+音楽。

今回はお散歩に合う音楽ではなく、音楽に合うお散歩を探してみた。

そして探し歩いた距離は25km、3万歩を超えた。

最近、オレがヘビーローテーションしているのがザクス・バントゥウィニの最新アルバム。

まず、名前がいい。

ザクス!!

© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

パズーとシータが手をつないで言い放ちそう。

3月末に発表された彼の最新アルバム『Echoes Of Botanical Gardens』全7曲をプレイリストにした。

アルバム全体で物語のあるひとつの旅を感じるコンセプトで作ったらしく、9分の曲とかあってトレンドからは逆行しているが完成度は高い。

今年上半期で買ったアルバムの中でマイベストを挙げるならこれ。爆音で聴きたい。

Zakes Bantwini, Skye Wanda – Focus (Visualizer)

これまでのザクスは、エッジの効いたシンセと疾走感のある打楽器が主体のアフロテックだったのが、このアルバムで明らかにスタイルを変えた。

これまでの硬いアフロテックもカッコよかったが、これはザクス史上最高傑作!!

Echoes Of Botanical Gardens(植物園の余韻)というアルバムタイトルの通り、「自然」「成長」「癒やし」「静けさ」をテーマにした深みのあるソウルフルなスタイルに。

自然、成長、癒やし、静けさ、か……

このキーワードに合致する場所を求めて、大阪は西成区に降り立った。

オレ調べでは西成には癒しも静けさも……いや、全てが揃っている。

複数の大学で学んだ音楽理論に裏打ちされ(ジャズの学位を持ってる)、グラミー賞も受賞しているザクスの洗練されたサウンドに似合うのは、大阪で最も洗練されている西成しかない!

ということで、飛田新地にやって来た。

言わずと知れた日本最大のちょんの間街である。

横浜黄金町は平成で滅亡したが、飛田新地は令和の世にも残っている。

これがメインの通りだが、他にも何本か同じような通りがあって全部で150〜160軒のちょんの間が密集している。

オレが行ったのは午前10時過ぎだったが、もう営業してる店がチラホラあった。ほとんどの店は夕方からの営業みたいだけど。

「お兄さん、おいでおいで」

店の前を通ると、「おばちゃん/ママさん/やり手バア」と呼ばれる客引きの年増女性が声を掛けてくる。

ちなみに、現代でも普通に使われる“やり手”。語源は吉原など遊郭で働く女性の役職名、遣手(やりて)。遊女の管理から、客との交渉など高度なスキルが必要なポジションのことだったのが、転じて「仕事ができる人」のことを“やり手”と呼ぶようになったとか。

だから、飛田新地の「おばちゃん」を「やり手バア」と呼ぶのは語源通りで、本来の使われ方。

お店は建前上は「料亭」という設定になっているが、料理を出してくれそうな雰囲気はゼロ。通りに面した店の入口は大きく開け放たれていて、玄関から一段高くなったところには「お運びさん」と呼ばれる女性が座布団の上にちょこんと座っている。

これが⋯⋯若くてかなりかわいい「お運びさん」ばかりでビックリした。レベル高い。

「おばちゃん」が客を呼び込み、客が「飲食代」を払った瞬間、「お運びさん(=ウェイトレス)」が“恋に落ち”(自由恋愛)、2階に上がって即セックスする。

飲食代を払わない人とは恋に落ちないので、セックスしない。つまり、自由恋愛の唯一のスイッチはお金である。

そして自由恋愛のくせにセックスは時間制になっていて、15分からスタートし、時間の長さによって「飲食代」が違うという謎。

食べ放題の時間制限みたいな建前か?

建前を考えると、風営法ではなく食品衛生法に基づいた飲食店として営業してるはず。

実際、ここを仕切っている団体の名前は飛田新地料理組合

飛田新地での写真や動画撮影の禁止といった独自のルール、治安を維持するための管理をしてる。

ま、「お運びさん」の写真を撮ったり、客が写り込む写真を撮ってたらトラブルになるだろうな。まず「おばちゃん」が黙ってないと思う。客足が伸びる夕方以降は写真を撮るのは厳しいかも。

逆に言えば、それ以外なら文句を言われることもないはず。

ザクスのニューアルバムに、ほぼ共同制作と言っていいくらい深く関わっているのが、実力派シンガーのスカイ・ワンダ。

南アの音楽メディアでは「ザクスの緻密なサウンドデザインに、スカイ・ワンダが血を通わせた」という表現をされる。

そんな彼女の歌声が飛田新地で聴こえてきた気がした。

大阪で生まれた女やさかい

大阪の街よう捨てん

これザクスの曲じゃねー!BOROの曲!!

なお、ロシア語掲示板サイトyaplakalの「Японские шлюхи(日本の売春婦)」というスレッドに、ロシア人観光客が盗撮した夜の飛田新地の写真36枚が載っている。

飛田新地の西、堺筋を挟んで隣にあるのがあいりん地区だ。

東京・山谷、横浜・寿町と並ぶ日本三大ドヤ街として知られた街。

そして、2008年の第24次西成暴動を最後に暴動が起こっていない街。

通称三角公園では、ボランティアによる炊き出しが行われていた。

皆さん並んでいるので、オレも並んでみた。

万人に解放されているはずなのでオレも普通に炊き出しにありつけそうではあったが、オレのせいで誰かの分が減ることは不本意なので途中で離脱。

左の掘っ立て小屋で配布される食事を、並んで受け取る皆さん。

これは炊き出しをしてる皆さん。

この日は、野菜たっぷりのラーメンか、野菜たっぷりのぶっかけ飯の二択で、使い捨て容器1杯分であった。

50円の自動販売機。

オレが見つけた中では最安1泊700円のドヤ(宿)。

幾多の暴動を経て要塞化してる西成警察署。

日雇い労働者の街として知られる大阪・あいりん地区、横浜・寿町、東京・山谷だが、もはや日本に“日雇い労働者の街”なんてものは存在してないと思う。

あるのは、生活保護受給者の街。

寿町は街ごと老人ホーム感があったが、あいりん地区は(寿町と比較すれば)まだ少し元気そう。

ただ、猥雑とした雰囲気は未だ健在だが、昔とは確実に違っていると思う。

高齢化が進んでいるのは寿町と一緒だが、あいりんの場合は外国人バックパッカーが普通にいるようになったことが大きそう。

“よそ者”の存在が日常になって、オレみたいなのがウロウロしてても目立たなくなってる気がした。

治安も「良さそう」とは言わないが、少なくともかつてのような「あいりん地区はやばいところ」というのは古いと思う。

あいりん地区を歩き回った後は、北上して新世界へ。

本来であれば、オレもこんな格好でお散歩するべきだったのかもしれない。

浪花の町にザクスを聴かせて歩く男(AI作)。

やっぱ好きやねん やっぱ好きやね~ん

悔しいけど ザクス♪

これザクスの曲じゃねー!やしきたかじんの曲!!

新世界って昔はもっとディープな下町だった気がしたが、今は全然違ってた。

外国人観光客だらけで、店も観光客向けにSUSHIとかTENPURAとか看板を出してて「あれ?」って感じ。

東京で言うところの浅草みたいになっとる。

時代は変わりゆくのだ。

今年3月末に76年の歴史に幕を下ろした新世界国際劇場。

こういうところが姿を消し、普通に観光地になっていてつまんなくなってた。

この日、天下茶屋、飛田新地、あいりん地区、新世界と、ハーフマラソンでもないのに25kmも歩いて、ひとつの結論に達した。

ザクスに西成は合わん!!

自然、成長、癒やし、静けさ?

そんなもんは今回のお散歩コースにはない!

投げ銭Doneru

書いた人に投げ銭する

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