ボコハラムと民間軍事会社

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ボコハラムと戦う人たち

ナイジェリア北部で活動するイスラーム原理主義勢力ボコ・ハラム

以前、ブログ『神秘の力で原理主義勢力を撃退』で、ブードゥー教の秘密の力のおかげで銃弾に当たらないと信じ、重武装のボコ・ハラムに対してドラクエの初期装備レベルのこん棒弓矢で戦う『ヤンバカ』と『ヤンタウリ』という地元民兵組織に関して書いたことあります。

ボコ・ハラムと戦っているのは、主にナイジェリア軍。

さらに周辺4カ国の軍と一緒に結成されたアフリカ連合多国籍統合機動部隊(MNJTF)。

ブードゥー系の民兵『ヤンバカ』『ヤンタウリ』。

あともうひとつ・・・

民間軍事会社の影

ナイジェリア軍に同行取材したVICEの『ボコ・ハラムとの闘い』。

ビデオの中ではずいぶんと士気が高くみえるナイジェリア軍だけど、実際にはそれほどでもないというもっぱらのウワサ。

そもそも士気や練度が高かったら、ボコハラムとの戦いはここまで長期化してないでしょ?

ナイジェリア軍自体が汚職で腐敗していて、兵士の給与未払いなどもあって脱走率がかなり高いらしい。

気になるのが、ビデオの最後にチラッと触れられる程度だけど民間軍事会社の存在。

実は、ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン元大統領は対ボコハラム戦のために2つの民間軍事会社と契約したとされてる。

1社はロシア系で、もう1社は南アフリカ系。

南アフリカ系の民間会社は『ピルグリム・アフリカ』という会社と思われ、この会社は2008年に元エグゼクティブ・アウトカムズ社にいたコブス・クラッセンズという男がナイジェリアで設立した会社。

2008年といえば、ボコハラムの活動が活発化しはじめた頃か?

コブス・クラッセンズという名前が・・・すでに南アフリカ人(アフリカーンス系白人)の名前。

エグゼクティブ・アウトカムズ社は、アパルトヘイト時代の南アフリカ軍の特殊部隊にいた軍人たちで構成された世界初の民間軍事会社で、アンゴラ内戦やシエラレオネ内戦に参戦。

その恐るべき戦闘力に故マンデラ大統領が非合法化して解散させられた会社なんだけど、アフリカでは未だエグゼクティブ・アウトカムズ社の『卒業生』たちのネットワークがあるらしい。

表向きは『ピルグリム・アフリカ』は軍事コンサルタントとして後方支援するために雇われているみたいだけど、実際にはMi-24戦闘ヘリコプターを含む航空団もナイジェリアに投入している模様。

ツイッターにアップされた最前線の写真に、ナイジェリア軍の装備には存在しないはずの南アフリカ製レヴァIII対地雷装甲車が写り込んでて、ナイジェリア軍ではない外国人グループの存在がもはや公然の秘密と化している。

これが、色々と物議を醸しているようで・・・

アパルトヘイトの亡霊

そもそもナイジェリアは反アパルトヘイトの急先鋒だったわけ。

白人政権に対して武力闘争を繰り広げていたANCに対して軍事的訓練や経済的支援を提供し、国連反アパルトヘイト特別委員会の設置に主導的に関与していたのがナイジェリアという国。

それが、反アパルトヘイトのシンボルだった故マンデラ大統領がわざわざ解散させた白人政権時代の軍特殊部隊で構成される傭兵たちを雇うという行為は倫理的にどうなんでしょう?という話になってるみたい。

昨年、レオン・ロッツという南アフリカ人(ピルグリム・アフリカの社員)がナイジェリアで死んでます。

このレオン・ロッツという男、かつてアパルトヘイト時代に存在した『南西アフリカ警察対不正規戦部隊(KOEVOET)』の元隊員で、アパルトヘイト後はエグゼクティブ・アウトカムズ社で傭兵をしていたそう。

このKOEVOETは反アパルトヘイト闘争を繰り広げる黒人ゲリラと戦うために組織され、その性質上アパルトヘイト後に解散させられた特殊部隊。

反アパルトヘイト闘争を支援していた国ナイジェリアが、反アパルトヘイト闘争を弾圧する側だった兵士たちで構成される軍事会社を雇うというね・・・

ちなみに、レオン・ロッツの死亡理由は・・・ナイジェリア軍が間違って戦車砲を仲間に向けて撃っちゃったため。

仲間に対して誤射をよくやっちゃうそうです、ナイジェリア軍。

公表されていないけど、レオン・ロッツ以外にも2人の傭兵がナイジェリア軍の誤射で死んだという報道も。

南アフリカ政府の関与

物議を醸しているもう一つが、南アフリカ政府の関与の疑い。

南アフリカの法律上、南アフリカ人が南アフリカ政府の許可なくして外国の紛争に参加することは禁じられてる。

そんなわけで、南アフリカの国防相は「ナイジェリアで傭兵活動をしている南アフリカ人は帰国次第逮捕して起訴する」と脅したりしているんだけど・・・

ナイジェリアと南アフリカの報道では、ナイジェリア政府の情報筋が「裏で南アフリカ政府が関与している」ことを認めたとか。

いくつかの記事をチラ見したけど、African Defence Reviewの『Unravelling The Case Of Foreign Mercenaries In Nigeria(全文英語)』が一番全体像を網羅したような内容かな。

なんか、前にも南アフリカ政府の関与が疑われる話があったな・・・と思ったら、ブログに書いてましたわ。

日本ではニュースにならないリビア内戦』で、リビアのカダフィ大佐を救出する作戦を南アフリカ系の民間軍事会社が行ってて、NATO軍の爆撃でカダフィ大佐の車列が爆撃された時に南アフリカ人傭兵が死んでる件。

倫理的にどうとか、南ア政府が裏で関与とか色々あるにしても、伝説の民間軍事会社エグゼクティブ・アウトカムズ社の亡霊たちが未だにアフリカで活動しているのは事実のようで・・・

ソマリアの中にある自称国家プントランドが、ドバイのとある王族から個人的に出資をうけて『海洋警察軍(PMPF)』という海軍もどきの部隊を設立したんだけど、このプントランド海洋警察軍設立の際に訓練などを請け負ったのがサラセン・インターナショナル社と、スターリング社という民間軍事会社。

ピルグリム・アフリカ社と同様に、両社ともエグゼクティブ・アウトカムズ社から派生した会社という。

これは国連の調査でも報告されている情報。

ナイジェリアで民間軍事会社が軍事行動をしている話は、公然の秘密(政府レベルでは認めてない)だけど。

ちなみに・・・ナイジェリアでボコ・ハラムと戦う傭兵の月給は1万ドル(約110万円)だそう。

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