アナクロ的な大国主義的かつ国粋主義的思考方式

スポンサーリンク

北朝鮮で書籍を何冊か買ってきました。

日本にレッドパージの嵐が吹き荒れて、特高警察がオレの部屋を家宅捜査したら、部屋から北朝鮮発行の書籍が見付かって「やばいことになるんじゃないか?」と、心配でビクビクしたりしてなかったりする毎日を過ごしています。
北朝鮮発行の本以外にも、トルクメニスタンの独裁者トルクメンバシュ著『魂の書』とか、ジンバブエの独裁者ムガベ関係の本とか、ルワンダ大虐殺の本とかあるし、独裁者を作りだす研究をしている危険分子とみなされて、下手したら拷問されてムチ打ちの刑に処されるかも知れません。

熱風

北朝鮮のベストセラー作家・李鐘烈の中編小説『熱風』(日本語)も、買った本の1冊です。

実は・・・全部は読んでいないんですよね。
途中でギブアップしてしまいました・・・

この小説は、製鉄所に巨大クレーンを設置する鳶職人たちの奮闘を描いた感動超大作です!!

これだけでも超おもしろそうな臭いがプンプンする上に、1ページ目でいきなりギブアップしそうなほど読みやすい作風と、思わず吸い込まれそうな息もつかせぬ展開!!
1ページから212ページまで、ずーーっと“巨大クレーンを設置する話”が延々と続き、ドキドキハラハラします。

完全なるプロレタリア文学ですが、小林多喜二の『蟹工船』とは設定の段階からして違います。
『蟹工船』も個人的には面白くも何ともないので全部は読んでいませんが、“資本家 VS 労働者”という構図からして資本主義社会の中における労働者という設定になっているのに対して、『熱風』では社会主義国内における労働者の設定になっています。

まぁ、ようは党のプロパガンダ小説ですね。
朝鮮労働党が掲げるスローガンを基本とした話の展開になっているようです。

途中から登場人物が誰が誰だか分からなくなって、結末だけ読んだのですが・・・結末はこんな感じです。

「五ヶ月半はかかると言われたクレーン移設作業の早期完了は、当時、党中央が呼びかけた速度戦の革命的原則を建設部門に具現した模範の一つになった」

北朝鮮が好んで使う『速度戦』という単語が随所に出てきます。

「建設の成果も大きかったが、彼らが速度戦の熱風の中で新しい人間、チュチェ型の革命戦士に成長したという思いに胸がふくらみ、目がしらが熱くなった」

言ってることがさっぱり分かりませんが、多分・・・鳶職人たちが頑張ってクレーン設置作業を予定よりも早く終わらせた・・・というストーリーなのでしょう。
労働者たちは、歓喜の声をあげ、そしてシュプレヒコール。

「偉大な金日成主席と栄光に輝く党中央を生命を賭して守ろう!」

「党中央のさし示す速度戦の革命的原則を貫徹しよう!」

↑最終的にここに持って行くための、212ページにわたるクレーン設置のお話です。

さすが、ベストセラー作家だなぁ~と感心しました。
オレには“クレーンを設置する話”で本一冊は書けないです。

Truth behind the Revision of History Textbook by Japanese Authorities

他に買ったのは『Truth behind the Revision of History Textbook by Japanese Authorities』(英語)という、ペラッペラのわずか19ページの冊子。

これ、実は『日本当局の歴史教科書改ざんの真相』の英語版なんです。
日本語版が見当たらなかったので英語版を買ってきたのですが、なぜか日本語版はPDFでもらった。

比較してみると・・・日本語版では「野獣じみた蛮行」と書かれているところが「atrocities(残虐行為)」だったり、「強盗さながら」が「gangster-like(ギャングのような)」となっていますが、多分・・・日本語版を英語に翻訳したのではないか?と思います。
日本語版の方が、より堅苦しい修飾語がふんだんに用いられています。

日本語版の前書きはこんな感じです。

日本当局の朝鮮史歪曲行為は、かつての日本帝国主義の朝鮮人民に対する犯罪行為を合理化することによって、軍国主義者の前轍を踏んで再び侵略の道を歩もうとする企みの現れであり、朝鮮民族に対する許し難い冒涜であり、また日本帝国主義の侵略と虐殺、略奪の歴史を正しく記載することを求める朝鮮人民と世界の公正な世論に対する公然たる挑戦である

英語版もこれと全く同じ内容ですね。

歴史教科書を作ってる人たちって、日本を軍国化して再侵略戦争を狙えるほど影響力があるのか?
ただのおっさんだろ?

日本の世論を観察する限り、教科書問題なんかよりも、北朝鮮の弾道ミサイル(自称・人工衛星)発射に触発されて「防衛のあり方」とか議論に上がるレベルなわけだから、もし日本が軍国化するとすれば“北朝鮮のおかげで軍国化”って可能性の方が高いんだけどね。

この小冊子の内容は・・・

「朝鮮が中国の歴代王朝に服属していた」と記述しているのは、事大主義的な外交形式を本質とみなした悪どい歴史捏造である

とか、

とりわけ、高麗がモンゴルの「属国」であったとする記述は、まったく常識はずれの捏造である。当時、広大なユーラシア大陸がモンゴルの支配下に入り、チンギス・ハンの後裔が直接統治するモンゴル汗国が建てられたが、高麗だけはその主権を維持した。
この厳然たる歴史的事実を否認し、高麗がモンゴルの「属国」であったとする記述は、国の自主権を守り抜いた朝鮮民族の誇らしい歴史に対する許しがたい歪曲である

はぁ~・・・

“常識はずれの捏造”ね・・・

元史・巻二百八「列伝第九十五・外夷一」』の中に、大蒙古国皇帝フビライ・ハーンが日本国王宛てに送った「小国の君へ」と超上から目線で始まる書簡が載ってるけど、その中に「高麗、朕之東藩也」と書いてあるけどね。

『藩』って、属国の意味だろ。

『元史』そのものの信憑性はとやかくとしても、少なくとも『元史』に書かれているくらいだから“常識はずれ”ではない見解だと思うけど。

他には、こんな記述もありました。

「日本の安全」のために朝鮮占領が「必要」であったというのは、弱小国を自国の利益に供するものとみなす、まったくアナクロ的な大国主義的かつ国粋主義的思考方式であり、日本軍国主義者に固有な「朝鮮半島脅威」説に根ざす妄説である。
この主張の根底には多民族をさげすむ思想と大和民族の「優越性」を宣伝する極悪な人種主義思想がひそんでいる。
「満州の権益保護」を云々するのもつまるところ、日本が他の大国の侵略から満州を「防衛」しなければならないということであるが、これは本質において「おれが生きのびるためにはお前を食わなければならない」という弱肉強食論のむき出しの主張である。
今日、自主時代に「政治大国」を気取り、国連安保理事会常任理事国になるため奔走する日本軍国主義者の思想・意識と倫理・道徳水準はこのように低劣である

偶には、まともなことも書いてありますね。

“弱肉強食論のむき出し”は、その通りですよ。

歴史を考える時に、今の『常識』と同じ基準で考えるのはちょっとムリがありますが、当時の『常識』で考えれば“弱肉強食”が普通でしょ?
当時の世界は(極端にいえば)列強の仲間入りをするか、植民地化されるかの二択だったわけだろうし。
それが良いか悪いか、今の『常識』だけを基準にして判断するのは違うと思うけど。

関係ないけど、最近、明治30年に出版されたタイについて書かれた本を読んでいるんですが、『フランスと、シャム(現タイ王国)との間の和議が決裂し、明治26年7月30日にフランスの軍艦3隻がメナム河口のシャム側砲台を陥落させ、ついにバンコクに侵入してきた』と書いてありました。
まさにタイ版の黒船到来です。

この国難を乗り切ったのが、『名君』と名高いチュラロンコーン大王で、国制度や軍の近代化を推し進め(チャクリー改革)、列強のイギリスにはマレー半島の一部を、同じくフランスには属国だったカンボジアとラオスを割譲しながらも、タイの植民地化を防いだわけです。
こういう歴史があるから、タイ人女優が「アンコールワットはタイのもの」と発言したこと(実際はデマ)にカンボジア人がブチ切れて、暴動になってタイ大使館に放火したりしたのです。
国境紛争で銃撃戦になったりしてるのも、フランスに割譲した時の線引きが原因ですね。

結局、近代化の波に乗り遅れた国は、嫌でも『弱肉強食論むき出し』の餌食になるのが当時の世界だったと。
その中で近代化を進めて植民地化にならなかったのが、アジアでは日本とタイだったというだけです。

The Days of Anti-Japanese Struggle

あとは・・・『The Days of Anti-Japanese Struggle』(英語)という本も買ってみました。

『抗日闘争の日々』って、どんだけ過去の歴史に固執してるんだ?!って(笑)
『抗日』に満腹気味で、まだ読んでません。

まぁ、北朝鮮の場合は金日成永世主席を頂点とする国だから、彼が抗日闘争の英雄という設定になってる以上、植民地時代の話に固執し続けるでしょうね。
だって『抗日闘争を勝利に導いた百戦百勝の将軍』というポジションに立脚していてはじめて金日成の偉大さがアピール出来るわけだから。
抗日闘争がなかったら、彼の設定が根本から崩れちゃいますしね。

読む気になって読んでみて、何か面白いことが書いてあったら紹介します。

スポンサーリンク
広告(大)
広告(大)

この記事をシェアする

フォローする

関連コンテンツユニット
スポンサーリンク
広告(大)