あいつ今何してる?(ムガベ編)2

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腐っても英雄

「独裁者は国民から忌み嫌われているもの」という思い込みを前提にすると、クーデター後のムガベの処遇がいまいち理解できない。

AFPの報道によると、ムナンガグワ新大統領はムガベに以下の内容の退職給付をするようだ。

  1. 5年毎に車3台(ベンツS500シリーズ又は同等のセダン、SUV、ピックアップトラック)を支給
  2. 車の燃料代は政府負担
  3. ムガベ夫妻には外交パスポートを発給
  4. 夫妻で年4回のファーストクラスでの飛行機もしくは列車による国内旅行と、年4回のプライベート飛行機による海外旅行をする権利
  5. 家具付きの住居を首都ハラレに準備(光熱費は政府負担)
  6. ムガベ一家に健康保険を含む福利厚生を用意

ローカルの報道では、これとは別にムガベに退職金として1000万USドル(約11億円)が支払われるという話もあったけど、この退職金の話はジンバブエ政府が否定している。

退職給付もどこまで本当か知らないけど、もし本当だったとしたらクーデターで失脚したとは思えない厚遇で、ただの引退した”元大統領”である。

普通に考えれば・・・

37年も最高権力者で、その間に当然のごとく不正蓄財して大金持ちであるムガベなら、金銭的な退職給付は必要ない。

もし、これが軍のクーデターではなく民衆蜂起を発端とする政権転覆だったら間違いなくムガベ一家の資産は没収されてるはず。

それをしていない、というか逆に厚遇されてるってのは「ムガベ憎し!」というクーデターではないということの証じゃないか?と。もしくはそう思われるように狙ってる。

実際、ジンバブエ国防軍は今回の件はクーデターではないと否定。

ムガベの取り巻きの中にいる犯罪者(暗にG40派のこと)を追放するための処置と発表している。裏を返せば、ムガベ本人に対して起こした行動じゃありませんよと。

大体、普通に考えて93才のジジイなんかほおっておいてもそのうち死ぬ。

もうじき死ぬかも知れない人を失脚させるためにわざわざクーデターを起こすって、得られるメリットよりリスクの方が高いでしょ。

多分だけど去年の時点でムガベに実務なんて年齢的にムリで、実質的にはお飾り状態だったんじゃないか?

だからジジイのムガベを差し置いてG40派とラコステ派で後継者争いをしていた(そしてラコステ派が有力だった)のに、急にムガベが出しゃばって妻のグレース・ムガベの肩を持ってG40派に有利なように人事を発動したもんだから「ジジイが何を首ツッコんでんだよ!」と、話がこじれた。

ラコステ派からしても、グレース・ムガベを排除するにはどうしても夫であるムガベを排除するしかない。

後継者争いに首をツッコまなければムガベも死ぬまで失脚することはなかったと個人的には思ってる。

結局のところ、今回のクーデターって・・・

37年に及ぶ圧政が・・・とか、民衆の力で独裁者を倒すべく・・・とか、下々の統治される側である民衆の都合じゃなく、ただただ上の方で統治する側の後継者争いの結果であって、「37年にも及ぶ独裁者からの解放!」的な視点で考えるといまいちよく分からなくなる。

しかも与党 vs 野党だったらまだ健全だけども、ただただ与党内のゴダゴダであって[ムガベ退陣=民主主義的になった]わけではない。

大体、この大事な時期に野党はどうか?と言えば全然良いニュースを聞かない。

2日前の報道では、最大野党ジンバブエ民主変革運動(MDC)の党首モーガン・ツァンギライはガンを患って南アフリカの病院に入院中で危篤状態。

ツァンギライ党首の求心力が働くなった最大野党MDCは分裂しているそうで、今年の総選挙を前に早くも敗色濃厚か?

強権的ポピュリスト

ムガベを独裁者と考えるか、英雄と考えるかという点。

実際に圧政下にあったジンバブエ国内での評価は正直分からないけど・・・

それ以外でのアフリカにおけるムガベの評価は、正直言って南アフリカが生んだ偉人ネルソン・マンデラに近い。

英雄ムガベなのだ。

ただ、その妻グレース・ムガベの評判は悪くて全然人気がない。

つまり、もうすぐ死ぬジジイにして、アフリカで人気を誇る英雄ムガベをクーデター後にどう取り扱うか?って考えた時に・・・

オレがクーデターを起こした側だったら、とりえあずあまり波風を立てずに時間が過ぎるのを待つ。

ムガベ人気を考えると、処刑したり、あまり雑な扱いをするとアフリカの世論が心配。

当然ながら国内にもムガベ信奉者がまだまだいるとみておいた方がいいだろうし。

実権のあるなしじゃなく、ネームバリューがあるジジイの取り扱いは要注意だ。クーデターを起こさざるを得なかったが、あとの問題は時間が解決してくれるだろう。

じきにムガベが年で死んじゃったら、あとは残されたグレース・ムガベ夫人を煮ようが焼こうがアフリカの世論はこちら側につく計算。

それに夫がいなくなったグレース・ムガベなんて、恐れるに足りない存在でしょう。虎の威を借りる狐の、虎が死んだ後なんてラコステ派のライバルにすらならないかもしれない。

ムガベを日本とか欧米での『独裁者』というイメージで考えるより、アフリカでの『人気のある英雄』として考えた方がいいかな?と個人的には思ってたりして。

ムガベは独裁者っていうより、正確には強権的ポピュリストじゃないかな?

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