トロフィーハンティング(2)

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    JUGEMテーマ:日記・一般

     

     

    ワシントン条約の決議で、クロサイのトロフィーは南アフリカとナミビアの2カ国のみ各5点の年間割当量が認められている。

     

     

    2カ国とも年間5頭を上限にしてハンティングトロフィーを輸出してもいいよ、この2カ国の証明書があれば他の国は輸入していいよ、というわけだ。

     

     

    決議にはこんな内容のことが書いてある。

     

     

    「(南アフリカとナミビアでは)効果的な保全、管理によって一部では個体群が回復しつつあって、個体群が割当量に耐えられないことを示す科学的データが現れない限り、トロフィーハンティングの金銭的な利益がクロサイの保全に直接役立つので許可する」と。

     

     

    この決められた上限数の範囲内で、南アフリカとナミビアは毎年ハンティングの許可数を決め販売する。

     

     

    2016年、ナミビア政府はクロサイ3頭のトロフィーハンティング権をオークションに出した。

     

     

    アフリカ各国の自然保護政策には要塞型と、住民参加型の2パターンある。

     

     

    要塞型保全は「今日からここは自然保護区です!」と宣言した場所から住民を強制移住させ排除する。

     

     

    現在の自然保護区の歴史をみれば植民地時代までさかのぼる場所も多く、例えばナミビアのエトーシャ国立公園はそこに住んでいたコイコイ族を排除して設置されたし、ボツワナのセントラルカラハリGRも住んでいたサン族を排除して設置された。

     

     

    偶に、野生動物と人間の軋轢について「野生動物の生息域に後からやってきた人間の方が悪い」的な意見を言う人は、日本で人間が平野から山へと生活圏を拡大していったのと同じ感覚で言っているのかも知れないが、状況が必ずしも同じとは限らない。

     

     

    アフリカの先住民サンなんて、南下してきたバントゥー系民族に追い払われ、海を渡ってきたヨーロッパ人から追い払われたと思ったら、最後は野生動物のために追い払われと散々だ。数千年前はコイコイ族と合わせて世界最大の民族集団だったのに、今やゾウより数が少ないのにゾウより気にかけれられていない。

     

     

    住民を排除する要塞型はコストがかかる。住民は密猟の取り締まりに協力してくれるわけもなく、広大な自然保護区をレンジャーが監視の目を光らせるが限界はある。排除された側の住民は敵になれど味方にはならない。

     

     

    要塞型にとってかわったのが、住民参加型保全。

     

     

    ジンバブエのCAMPFIRE、ザンビアのADMADEといったプログラムなんかが割と知られている。

     

     

    キャンプファイヤと言っても、Communal Areas Management Programme for Indigenous Resources(自然資源のための共有地管理プログラム)の頭文字から取られている。

     

     

    ざっくりいえば、国立公園の外に緩衝地帯を設けてそこの野生動物を共有財産として住民たちも参加して管理しよう的な話だ。

     

     

    人間と野生動物の間にがっつり境界線を引いて人間は排除するのではなく、住民たちも取り込もうと。

     

     

    CAMPFIREもADMADEも、トロフィーハンティングの収益が地域住民に還元されるシステムになっている。

     

     

    ”前提としては”科学的データを元に地域ごとにトロフィーハンティングの年間割当量が設定される。状況によっては割当量がゼロの年もある。

     

     

    例えばサイのトロフィーハンティングに関して、ナミビアのポハンバシフェタ環境観光大臣は「クロサイの出生率は5〜6%で、自然死とトロフィーハンティングによる狩猟を加えても死亡率は1.5%未満であり、クロサイの増加に悪影響はない」とThe Namibianのインタビューに答えている。

     

     

    還元された収益は現金としての分配の他、学校やインフラの整備、野生動物に畑を荒らされたり家畜を襲われたりして被害を被った時の補償の原資になる。

     

     

    この場合、密猟は自分たちの収入源になる野生動物をタダで殺される(収入源を失う)ことになるので密猟取り締まりに協力的になる。

     

     

    動物愛護の観点からというより、経済的なインセンティブを与えることで住民たちの保全意識を高める狙いだ。

     

     

    言ってしまえば、守るために殺すという話だ。

     

     

    個人的には、もしトロフィーハンティングを失くすとすれば、この経済的インセンティブの仕組みをトロフィーハンティング以外でどう構築するかがポイントかな?と思ったりして。

     

     

    我々は庭にゾウも出ないし、ライオンも出ない。一方の彼らは野生動物界と人間界の最前線に住んで昼はゾウが出て畑を荒らし、夜はライオンが出て家畜を襲う環境にいるわけで、彼らにとっては害獣であって愛でる対象では必ずしもない。

     

     

    そもそも「白人がゾウやライオンを見て何で喜んでいるのかが分からない」という現地人だっている。

     

     

    価値観の押し付けより、目に見えるインセンティブも必要かと。

     

     

    国立公園では一切の狩猟が禁止されているので、ハンティング自体はその周辺に設けられた人間と動物との緩衝地帯で行われる。

     

     

    欧米を中心にトロフィーハンティングに非難が殺到していることを、ザンビアの観光大臣ジーンカパタはニューヨークタイムズの電話インタビューで皮肉を込めてこんなことを言っている。

     

     

    「西洋ではどうか知らないが、アフリカでは動物より人間が重要だ。西洋ではアフリカの人間よりもライオンの福祉の方に関心を向けているようだけど」

     

     

    観光ではなく、なぜトロフィーハンティングなのか?というところだが・・・これは大いに議論があるところでもある。

     

     

    車で南部アフリカを旅した経験から言うと、多分お金を落とす場所が違うんだと思う。

     

     

    オレの場合、食糧を町のスーパーで購入し、国立公園の入園料(人数+車両)を払い、キャンプの設営料を払った。

     

     

    観光業に従事している人はまだしも、ヤギやら牛を放牧していたり、畑を耕している住民と観光客の接点がそもそもない以上、お金を落とすことがない。たま〜に、道端で野菜や薪を売ってたら買うくらいだが、毎日ではないし微々たる額しか使っていない。仮にお金を使いたくても使う場所がない。

     

     

    トロフィーハンティングは実際には地域経済にそれほど貢献していないという意見の根拠として、観光収益と対比されても正直ちょっと違う気もするし・・・トロフィーハンティングの収益はGDPで0.0何%程度だからと言われても「いや、そもそもあんな場所GDPゼロの土地なんじゃねーの?」とは思ってしまう。

     

     

    観光客が落とすお金の恩恵に預かっているかどうかでいえば、預かってないだろな。

     

     

    仮に、国立公園の入園料を外国人だけボッタクリ価格にして、それを原資に分配したら・・・と、ちょっと考えたんだけど、これは地域住民に野生動物を保全しようと思わせるだけのインセンティブとしては弱い気がする。

     

     

     

    もうひとつややこしい問題があるので、それは次に。

     


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